上野動物園のオオカンガルーのメス「クッキー」が、初めての赤ちゃんをお腹の袋で育てています。赤ちゃんが袋から顔をのぞかせたのは2009年12月23日でした。今では頭だけでなく、脚やしっぽを出していることもあります。このように赤ちゃんは体の一部を袋からのぞかせながら約2か月を過ごし、3月ごろ袋から体全体を出します(出袋[しゅったい]といいます)。
じつは、残る2頭のメス「ラッキー」と「チョッキー」の袋にも赤ちゃんが入っています(チョッキーは、2008年に上記のクッキーを出産しました)。
昨年(2009年)12月8日、ラッキーが自分でお腹の袋を広げ、なめて掃除をしていましたが、そのとき、わずかに袋が動くのを確認しました。おそらく、体長が数センチしかない小さな子が入っていたのだと思われます。
おもしろいのがチョッキーです。チョッキーは現在、2頭の赤ちゃんを育てています。1頭は昨年6月に出袋した子どもで、まだ母親チョッキーのおっぱいを飲んでいます(オオカンガルーは離乳するまでに約1年かかるのです)。もう1頭はまだ袋の中にいます。
カンガルーのなかまは「着床遅延」が見られることで知られています。つまり、赤ちゃんを産んでしばらくすると交尾しますが、赤ちゃんが袋の中にいるあいだ、受精卵は子宮に着床せず、初期の段階で発生がストップするのです。赤ちゃんが出袋し、お腹の袋が空くと受精卵は発生を開始し、出産にいたります。
ですから、環境が整えば、出袋した子、袋の中の子、そして胎児と、3頭同時に育てることもあります。ただし、これまで上野動物園では、子どもが完全に離乳してから次の子が生まれていたため、子育てが重なることはありませんでした。
しかし今回初めて、チョッキーは2頭同時に授乳し、育てています。出袋した子は袋の中に全身を入れることはありませんが、袋に頭を突っ込んで乳を飲んでいます。また、ふくらみの目立ち始めたチョッキーの袋は、よく見ると中で赤ちゃんが動いているのがわかります。生まれたのは昨年10月ごろと思われます。
オオカンガルーの乳首は4つありますが、子どもごとに吸いつく乳首が決まっています。そのおかげで、出袋した子と袋の中の子に対して、それぞれ異なった成分の乳を与えることができます。よくできているなぁと思います。
ますますにぎやかになるオオカンガルー舎。上野動物園の西園においでください。
写真上:クッキーとお腹から顔を出した赤ちゃん
写真下:オオカンガルー舎のメス3頭
左上クッキー、左下チョッキー、右ラッキー
◎東京ズーネットBBの動画から
オオカンガルーの親子 (2005年06月撮影)
オオカンガルーの赤ちゃん(2005年08月撮影)
〔上野動物園西園飼育展示係 多田和美〕
(2010年01月15日)