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スンダスローロリスの親離れと「夜の森」照明の工夫
 └─上野  2009/12/11

◎親離れしたスンダスローロリス

 上野動物園の「夜の森」では、今年(2009年)3月に生まれたスンダスローロリスの子ども(オス)が親離れしました。

 生後半年経った9月ごろから、自分の尿を岩や枝にこすりつけ、スンダスローロリス特有のマーキング行動も見せるようになりました。体の大きさも行動もおとなに近づいてきました。

 母親も、子どもがついて来たり、遊ぼうとして近づいて来たりすることを迷惑がるようになったのか、子ども相手に本気のケンカのような「取っ組みあい」をするようになりました。

 この母親は初産だったので、父親は別の部屋に移しました。移動先は、フェンスを挟んで隣にあるミミセンゼンコウの部屋で、ここにはスンダスローロリスのメスが複数います。

 スローロリスはなわばり意識が強いといわれており、オスの同居がむずかしいので、2009年11月2日から、父親と子どもを交替で展示するようにしました。父親を母親と同居させたところ、それまでもフェンスごしにおたがい顔を見ていたせいか、なにごともなかったかのように一緒に行動するようになりました。

 両親をいっしょに展示しているあいだ、子どもはメスたちがいる隣の部屋に移すのですが、他の個体との同居は初めてとはいえ、とくに大きなトラブルも見られません。11月20日には、子どもとメスたちが全員でいっしょに食事をしており、一安心しました。

◎「夜の森」の照明の工夫

 スンダスローロリスやベンガルヤマネコ、オオコウモリなどがいる「夜の森」は、照明の点灯時間を工夫して昼と夜を逆転させ、夜行性動物の生活をお見せする施設です。もちろん、真っ暗にしてしまうと動物がまったく見えなくなってしまうので、展示時間には、動物を刺激しない程度の薄暗い照明にしています。

 しかし、どの程度の明るさにして、どの場所に照明をあてるかが大問題です。場合によっては、昼夜のリズムがわからなくなり、動物が巣箱から出てこなくなったりするので、昔から担当者を悩ませてきました。また、真下に向かって照らしているライトが多く、動物が暗い場所に逃げてしまうこともあります。

 そこで、ガラスの外側に小さいスポットライトを足したり、照明の角度を変えて動物に間接的に光があたるように調節したりして、部屋全体が明るくなるようにしました。その結果、場所によってはオオコウモリやベンガルヤマネコの顔がよく見えるようになりました。

 とはいえ、行動パターンや光の感じ方は動物ごとに異なっており、それに合わせるためにはまだまだ改善すべき点がたくさんあります。自然の「月の光」がいかに優れた照明かとつくづく感心しながら、室内の「夜の森」の照明について試行錯誤を続けています。

 「夜の森」にお越しの際は、まず目が慣れるよう、ゆっくりと通路を進みながら、動物たちを探してみてください。

東京ズーネットBBの動画
レッサースローロリスの親子」(2005年05月撮影)

〔上野動物園東園飼育展示係 中村壮登〕



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