高知県立「のいち動物公園」から上野動物園に、プレーリードッグが4頭やってきました。2007年生まれの雌雄各1頭と、2009年生まれのオス2頭です。あたらしい個体を群れに入れ、近親交配が進まないようにするためです。
検疫後の2009年9月20日、「のいち群」はバイソン舎内のストックルーム(裏側の飼育室)にやってきました。最初はワラや乾草に潜ってじっとしていましたが、しばらくすると、そって出てきて餌を食べ始めたので一安心。
そして、前からいる「展示場群」との「お見合い」です。ストックルームと展示場を区切っている小さな扉をあけ、そこにプレーリードッグの強靭な歯でも噛み切れない金網を設置しました。ニューフェイスの4頭は警戒しながら、網の近くでじっと外を眺めていました。
そこへ展示場群から1頭がやってきました。おたがい興味深そうなようすで、金網ごしに臭いを嗅ぎあい始めました。顔合わせをする個体は徐々に増え、担当者も「案外うまくいってくれるかも?」と期待をふくらませました。
お見合いさせた数日間、担当者はただ見守っていたわけではありません。今後の同居にそなえ、おたがいの臭いに警戒しないよう、フンや尿のついたワラや乾草を相手側の巣に入れたり、展示場にフンをばらまいたり。工夫しながら、お見合いがうまくいくよう願う飼育係は、まるで仲人のようです。
さて、いよいよ放飼場に「のいち群」を出すことになったその前日、個体を見わけるために、「のいち群」のお尻の毛を少し刈りました。お尻のあたりがはげていても、ケガや病気ではありませんので、ご安心ください。
10月12日、ストックルームと展示場を隔てていた金網を撤去しました。仲人は外から観察します。「なかよくしてくださいよぉ」と願う仲人。しかし、期待通りにはいかないものですね。「なんだお前」と目の色を変え、高知から来た個体を追い回したり、さりげなくお尻の辺りを噛もうとしたり……。
以前からいる個体のうち何頭かは、まったく気にかけず、すんなりと新参者を受け入れているようですが、それでも、のいち動物公園から来た4頭は肩身が狭いようす。「あとは若いプレーリードッグたちにお任せして……」という仲人お得意のセリフが言える状況ではとてもありません。
今も日中はストックルームにいることが多い「のいち群」。はたして、上野の個体となかよくなれるでしょうか? 担当者は気長にかまえてはいますが、仲人の憂鬱は、もう少し続きそうです。
写真上:ストックルームでくつろぐ「のいち群」
写真下:おそるおそる展示場に出てきた「のいち群」の1頭
〔上野動物園東園飼育展示係 川崎繭〕
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