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見おろす魚、ルックダウン
 └─葛西  2009/10/02

 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「19号水槽」はブラジル沿岸の水槽です。みなさんはブラジル沿岸の水槽をもうごらんになりましたか? この水槽を見るときは、少し離れた位置に立つことをおすすめします。

 離れた位置から水槽を眺めると、銀色に輝く体をひるがえしながら悠々と泳ぐ魚の群れが目に入ります。ところが、じっと見ていると、この魚たちが身をひるがえす瞬間、水槽から忽然と消え、そしてまた現われます。なんだか手品のようですね。今回は、この一瞬消えて見える魚「ルックダウン」をご紹介します。

 ルックダウンは、スズキ目アジ科に属し、西大西洋の熱帯域に分布しています。砂底または泥底の浅海に生息する肉食性の魚で、体高が高く、体長は20~30センチほどになります。前述のように、銀色の美しい体色が特徴の魚です。

 「ルックダウン」という言葉には、「見おろす」「見くだす」「下落する」などの意味がありますが、どうやら「見おろす」がこの魚の名の由来のようです。ルックダウンを近くでじっくり観察すると、「側線」(えらの上端付近から尾に向けて走る線)が大きく湾曲しているのがわかります。ややそり返った縦長の顔のほぼ中間点に大きな目があり、ややしまりのない口が下端に位置して、なんともユーモラスな顔つきをしています。ルックダウンはこの顔をやや下方に向けて泳ぐ姿勢をとることがあり、その姿が「見おろし」ているように見えたのでしょうか。

 そして、前述の手品のタネあかし。横から見た姿は存在感があるのに、正面から見るとなんと薄っぺらいことでしょう。遠目にはほとんど認識できない薄さです。

 この体の薄さもまた、ルックダウンの大きな特徴です。横姿がはっきりしているだけに、真正面を向かれると、そのギャップからかえって見えにくく感じませんか? あえて注意を集めておいて盲点を突くところが、ちょっとアジな魚なんです。ちなみに、アジだけに(?)味もよいそうです。あまり身がとれなそうですが。

 水槽内では現在、ルックダウンが9尾群れています。シンクロナイズドスイミングのようにそろって泳ぐ姿は眺めるにも楽しい魚です。葛西臨海水族園にいらっしゃったときは、「遠目で楽しく」「近くでじっくり」ごらんいただければと思います。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 飛田英一朗〕

(2009年10月02日)



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