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フンボルトペンギンの換羽遅延
 └─葛西  2009/08/28

 葛西臨海水族園では、フンボルトペンギンを百数十羽もの規模で群れ飼育しています。そのため、群れ全体で見ると、繁殖や換羽などの周年リズムがそれほど大きく変化することはありませんでした。それは、個体レベルでのリズムが前後しても、個体数が多いので逆の傾向を示すものがいるためです。

 ところが、最近おかしな変化が見られるようになりました。例年、産卵は11月から始まり、翌年の6月下旬まで続きますが、一昨年(2007年)秋は産卵が見られず、翌年2008年の3月中頃になってようやく産卵が始まりました。そのため、繁殖期内に2回以上産卵するのがふつうなのに、多くのメスは1回しか卵を産みませんでした。繁殖期が後半だけになったような状態です。

 これでは、その後の「換羽」(全身の羽毛が生えかわること)や、翌年の繁殖期に何か影響が出るのではないかと心配していました。ところが、とくに目立った変化はなく、例年通りに換羽が見られ、さらに次の繁殖期も終了しました。

 ところがその後、今年(2009年)の換羽がなかなか始まりません。例年だと換羽は6月末から始まり、8月中旬までにほとんど終了します。今年は、8月になって始まり、8月下旬となった現在、4~5割の個体がやっと換羽を完了したという状態です。夏の暑いさなかの換羽は大変なので、むしろこれからの季節は少し楽かもしれませんが、その後の影響が心配です。

 飼育方法はとくに変えていないので、原因はわかりません。しかし、群れ全体が同じ変化をしているので、繁殖や換羽を制御するホルモン分泌などで、全個体が何らかの生理的な影響を受けたものと思われます。なお、同じ場所で飼育しているイワトビペンギンとフェアリーペンギンも同じように換羽が遅くなっています。温暖化は関係ないと思っていますが……。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕

(2009年08月28日)



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