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アジアゾウ「アティ」のターゲットトレーニング
 └─上野  2009/07/31

 こちらのニュースでお伝えしたとおり、上野動物園では2009年3月にアジアゾウの放飼場改良工事が終了し、オスの「アティ」のターゲットトレーニング(音や指示棒などのきっかけに対し、決まった反応をするよう学習させる訓練)に取り組んでいます。

 それから3か月以上が経ちました。当初、まず新しい柵に慣れさせることから始めました。柵のある狭い放飼場にアティを移し、柵のそばで餌を食べさせたり、柵に自由に触らせたりして、警戒心を解くようにしたところ、アティには警戒するようすがほとんど見えず、柵を鼻で少し触っただけで慣れてくれました。

 このような準備を2、3日続け、それから「ターゲット棒」を使ったトレーニングにとりかかりました。アティを決まった場所に立たせ、飼育係が差し出す棒の指示に応じて、足や耳を柵の決まった場所から出させる訓練です。

 まず、体が柵と平行になるよう立たせます。このとき、頭を左右どちらに向けるか、その選択をアティにまかせたところ、飼育係から見て右側に頭を向けて立ちました。続いて、柵からターゲット棒を差し入れ、「頭」と号令をかけます。アティが頭をターゲット棒に触れたら、餌を与えます。

 次は、決まったところから右前足を出させる訓練です。足を出させたい柵の隙間からターゲット棒を差し入れ、「足」と号令をかけます。アティが前足を上げ、棒に触れたら餌を与えます。続いて「おろす」と号令をかけ、アティが足をおろしたら、餌を与えます。前右足が終わったら後ろの右足。それから耳の横に棒を出し、「耳」という号令をかけ、アティが耳を広げて棒に触れたら餌を与えます。アティの姿勢は右向きのまま、同じ訓練を何日か繰り返し、アティが慣れてきたら、向きを変えて続けます。

 以前もチェーンの柵ごしに同じようなトレーニングを行なっていたこともあり、アティは左右どちらを向いた姿勢でも一通りの動作をこなしてくれます。そこで、今後は足をあげる時間や耳を広げている時間を長くするなど、次のステップに向けてトレーニングを進める予定です。

 こうした訓練はゾウの健康管理を目的に行なっています。将来的には、採血や足の削蹄(さくてい:文字通り蹄を削ること)、治療などができるようにするつもりです。ただし、トレーニングはゾウの気分が最優先なので、あきらかにゾウに「やる気」が見えないときや、イライラしているようなときは、無理をせず中止します。なお、来園者の方々から見えにくい場所でトレーニングを行なっていますが、これは、ゾウと飼育係がトレーニングに集中するためですので、ご了承ください。

 ゾウの健康管理が思いどおりにできるようになるまで、どのくらい時間がかかるかわかりませんが、トレーニングに取り組むアティの成長をあたたかく見守ってください。トレーニングの時間帯は不定期ですが、おもに午後2時前後に行なっています。

〔上野動物園東園飼育展示係 藤本卓也〕

(2009年07月31日)



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