1992年公開、シャロン・ストーン出演のサスペンス映画「氷の微笑」──記事のタイトルにしてみましたが、そのおかげでこの文章に目を止めていただけたら大成功です。
さて、「氷に閉ざされた南極の海」などという表現を目にしたことはありませんか。「氷に閉ざされた」と聞くと、その冷たさで南極の海に生物はすめない、と思ってしまうかもしれません。
でも、南極のような厳しい環境にもたくさんの生物がくらしているのです。今回は、そんな南極にくらす魚をご紹介しましょう。
南極の海はマイナス2℃まで低下しますが、ふつう、魚のからだはマイナス0.7 ℃くらいで凍り始めます。そう聞くと、「南極の魚は凍らないの?」とふしぎに思うでしょう。じつは、南極の魚には凍らない秘密があるのです。
南極の海には、 200種類にものぼる魚がくらしていますが、そのうち「ノトセニア」と呼ばれるグループ(スズキ目)を例に、凍らない秘密をお教えしましょう。それは、血液中にある特殊な糖タンパク質です。これが不凍液の役割を果たすのです。また、血球などの血中成分が少なく、そのおかげで血液のサラサラ度が高まり、凍りにくくなっているのです。
南極の魚たちは、このように体が凍らない工夫を身につけることで極寒の海を生き抜いてきました。
もし、私たち人間が南極でくらすとしたら……。南極でなくても、寒い北国でくらすとしたら、電気やガス、石油など、限られた地球資源をたくさん使い、地球にものすご~く負担をかけないと生きていけません。そんな人間のくらし方を見たら、南極の魚たちは氷の下でニヤリと微笑むかもしれませんね。
南極の魚たちは、葛西臨海水族園の「極地」の水槽で見られます。数種類の魚を展示していますが、見る角度によっては魚たちの顔が「氷の微笑」に見える……かも?
写真はノトセニアのなかま「ブラックロックコッド」
〔葛西臨海水族園飼育展示係 伊東二三夫〕
(2009年07月17日)
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