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プレーリードッグ、知られざる「寝起きドッキリ」
 └─上野  2009/06/12

 今年(2009年)も上野動物園でプレーリードッグが生まれたことは、すでにお知らせしましたが(ニュース)、5月25日の休園日、その子どもたちを全頭捕獲しました。これは、個体識別するためのマイクロチップ(動物の名札のようなものですね)を体内に入れること、そして、子どもの性別を判定するためです。

 では、どうやって捕獲するでしょう? 放飼場に入って網で捕まえる? それとも何かでおびきよせる? じつは、もっと野性味あふれるというか、シンプルというか、かれらが寝ているころを見計らい、放飼場からつながっている巣穴を開け、寝ぼけているところを捕まえるのです。

 当日、飼育係は朝7時に現場集合。プレーリードッグたちを起こさないよう、そろりそろりと巣穴へに近づきます。そして、一気に巣穴の扉を開けて勝負開始!! かれらにしてみれば、「寝起きドッキリ」のような驚きでしょうか。

 しかし、かれらの驚きをよそに、飼育係は子どもだけを瞬時に見わけて捕まえ、用意しておいた箱に収容します。ここで大事なのは躊躇しないこと。一瞬ためらったそのすきに子どもたちがすっかり目覚めてしまい、放飼場へ逃げ込まれてしまう恐れがあるのです。また、素早く捕まえることや、動物にも人間にもケガがなく、負担を少なくするよう捕まえることも重要です。

 続いて、箱の中でまだ眠さでむにゃむにゃしているかれらに、獣医師がマイクロチップを挿入します。注射器の様な器具で背中の方に挿入するのですが、その針がまた太く、人間だったら痛さで悶絶するのではないか……と思えるほどですが、プレーリードッグたちはほとんど動かず、ほぼ一発で挿入完了です。

 この作業と同時に雌雄を判別し、1頭ずつ体重を測り、ふたたび放飼場に戻します。ちなみに今年いちばん重たかったのは 283グラムのオス、体重が少なかったのは 168グラムのメスでした。成獣はだいたい800~1,000グラムですので、その小ささがおわかりになるかと思います。

 この時期、放飼場にいる子どもの背中に少しだけ毛のない部分があったら、それはマイクロチップを入れた跡だと思ってください。でも、ご心配なく。この「ハゲ」は、ほとんどの場合、成長とともになくなっていきます。

 今年の子どもたちも、みなさんの知らないところで大きな試練(?)をひとつ乗り超えました。今後も、かれらの成長を見守っていきたいと思います。

写真:今年(2009年)生まれの赤ちゃん

〔上野動物園東園飼育展示係 川崎繭〕

(2009年06月12日)



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