マンガの『ど根性ガエル』、何かと話題になる「ど根性大根」や「ど根性ねぎ」(アスファルトの隙間などから生えているというやつですね)──世の中にはいろんな「ど根性」がありますが、多摩動物公園の昆虫園で発見されたのは「ど根性アゲハ」です。
2009年1月30日、昆虫園の外に生えているミカンの木に、ナミアゲハの終令幼虫を見つけました。このミカンの木は、アゲハチョウ類の食草として栽培しています。
ナミアゲハは蛹で冬を越すのがふつうなので、この寒い時期に幼虫でいるとは驚きました。毎日のように霜がおりるような場所で寒さに耐え、栄養のなさそうな白っぽいミカンの葉を食べ、生きながらえていたようです。冬でも残る葉に囲まれ、寒さからいくぶん逃れていたのかもしれません。
もしかすると、これは前例のないことなのかもしれないと思い、チョウにくわしい職員に尋ねると、「今年の冬は暖かいから」との簡単な返事でしたが、温暖化の影響下にあるとはいえ、この寒い中、必死に生き抜いている「ど根性」ぶりに感銘を受けました。
ツマグロヒョウモンやオオムラサキなど、幼虫で越冬するチョウも知られています。ナミアゲハが屋外で冬を越せるのかどうか、じっと見守ろうかとも考えましたが、幼虫の体は小さく、体色も悪いので、2月の寒さに耐えられなさそうだったので、ミカンの木から救出して、飼育下に置くことにしました。
幼虫は現在、暖かい室内で、柔らかくておいしいミカンの葉をもりもり食べ、だいぶ体色がよくなってきました。このまま、無事さなぎになることを願っています。
今回小さな生き物が「ど根性」で生きる姿勢を目のあたりにしましたが、私だけがあやかるのはもったいないので、昆虫園の「ふれあいコーナー」に置いて、さなぎから羽化するまでを展示する予定です。多摩動物公園の昆虫園で、「ど根性アゲハ」から何かを感じ取っていただければ幸いです。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 牧村さよ子〕
(2009年02月06日)
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