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臨海公園干潟でトビハゼ調査──葛西 2004/03/25

 みなさんはトビハゼをご存じでしょうか? すがたと動きがとてもユニークな魚なのです。あたまの上に飛び出た大きな目、顔の下で真一文字にかまえる大きな口、さらに陸上動物の腕を連想させるような胸びれも目立ちます。

 じつは魚のくせに、あまり水に入ることを好まないのですが、水中に潜むときは、この大きな目だけを水面から出してあたりをうかがいます。

 陸上では胸びれを使い、あたかも歩くように移動します。ときには体をくねらせて、陸上をピョンピョンと跳びはねることもあります。

 トビハゼがすんでいるのは干潟です。かれらは干潟の泥に直径2~3センチ、深さ25センチほどの穴を掘り、かくれ家や産卵場として使います。そして、潮がひいた天気のよい日などは泥の上を歩きまわっています。

 トビハゼは、私たちに身近な東京湾にもすんでいます。じつは、この東京湾のトビハゼは、全国的に見てもっとも北にすんでいる集団です。しかし最近、かれらのすみかとなる干潟が全国的に少なくなり、とくに東京湾ではめっきりそのすがたを見かけなくなりました。かろうじて、江戸川放水路、谷津干潟、新浜野鳥の楽園をはじめとした数か所で確認されているていどです。

 このような状況なので、環境省のレッドリスト(「日本の絶滅のおそれのある野生生物の種」のリスト)では、東京湾奥部のトビハゼは「絶滅のおそれのある地域個体群」、つまり、一地域に孤立しており、地域レベルでの絶滅のおそれの高い個体群に指定されています。

レッドリスト・レッドデータブックについて
(環境省のサイト内)

 葛西臨海水族園では、東京湾の環境について、みなさんにもっと知っていただくために、以前から水族園周辺のさまざまな水生生物の調査をおこなっています。この一環として、東京湾のトビハゼ調査を始めました。まず、今年度は臨海公園の目のまえの「東なぎさ」で調査を行ないました。

 この結果、とても少ない数ですが、夏にトビハゼの成魚と稚魚のすがたを確認しました。この調査は、干潟内を歩きまわり、「トビハゼのすがたを探す」というものです。私たちは、はじめは干潟内の比較的足場がしっかりした、歩きやすい場所から探したのですが、トビハゼは見つかりませんでした。

 結局、トビハゼを確認した場所は、私たちが避けていた場所でした。ここはとてもぬかるんでいる泥で、足を踏み入れると30~40センチくらい埋もれてしまうような場所です。さらに、このような場所は、干潟内でもほんのかぎられた範囲にしかありませんでした。

 トビハゼは、干潟ならどこでもよいというわけではなく、かれらが好む条件の場所は意外に少ないのかもしれないというのが、私たちの実感です。今後も水族園では、東なぎさを中心として、トビハゼ調査を実施する予定です。

 水族園でも、実際のトビハゼを展示した水槽があります。足をとめてじっくり観察してみてください。おもしろい発見があるかもしれませんね。

※写真一番下は、葛西海浜公園管理事務所による航空写真。

〔葛西臨海水族園・調査係 田辺信吾〕

(2004年03月25日)



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