ニュース
忍者の卒業式、入学式?──葛西 3/19
 “海の忍者”というと、ヒラメやカレイを連想する人が多いと思います。砂にもぐって身をかくしたり、餌を待ちぶせたり──まさに忍者にふさわしい行動をとります。

 カレイは、体の片側に眼が二つあるわけですが、生まれたときから成魚のような体型をしているわけではありません。孵化した仔魚は、すぐに海中を浮遊するようになります。このときは、ほかの魚類とおなじように、左右対称の体型をしています。
 ところが、プランクトンなどの餌を食べて、成長してくるとだんだん眼が体の片側によってきます。そして、成魚と同じような体型になった時点で着底し、はじめて海底での生活をはじめるのです。
 春一番が吹いて桜が咲くまでのあいだに、葛西臨海水族園の前の人工渚には、この冬生まれの10円玉くらいに成長したイシガレイの稚魚が集まってきます。まるで浮遊生活の卒業式と海底生活への入学式をおこなうためにここにやってきたようです。

 着底したてのころはまだ体が透明ですが、しだいに海底とおなじ色になってきます。こうなると、忍者の本領発揮です。渚の調査のとき、私たちがいくら目をこらして海底を見ても、カレイのすがたはまったくわかりません。
 しかし、タモ網で底を2~3回すくうと、たいてい数匹のカレイがとれます。この時期、人工渚で翼を休めている渡り鳥たちも、自分たちの下にたくさんのイシガレイの稚魚がいることに全然気づいていないかのようです。

 「東京の海」の2階にある「水族園周辺の海」の水槽で、この入学したてのイシガレイを展示していますが、現在改修中です。来月(2004年4月)には再公開します。
 これから約2か月間、人工渚周辺の浅瀬で生活したカレイたちは、5月下旬、全長が5~6センチまで成長すると、もう少し深いところへ移動していくようです。
〔葛西臨海水族園調査係 池田正人〕



ページトップへ