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体重増と反抗期──在来馬2頭の近況
 └─2008/02/29

 上野動物園にトカラ馬の琥太郎(こたろう、オス)が来て4か月、木曽馬の幸泉号(さちいずみごう)が来て3か月が過ぎようとしています。最初は食あたり、糞がゆるい、糞が出ない、まぶたに擦り傷がある等、こちらも気の休まるひまがありませんでした、2頭の性格や癖がわかるようになると、飼育にも心の余裕ができました。馬たちも環境になれ、のんびり過ごしています。

 幸泉号はすでにりっぱな大人。でも、体重が日々増えています。原因の一つは、動物園に来たため、運動量が減ったことです。そこで私は毎日、幸泉号にドカッとまたがって負荷をかけ、限られたスペース内で運動させています。体重増のもう一つの原因は気候です。幸泉号がいた長野県の開田高原にくらべると東京は暖かく、そのためエネルギーを使っていないと考えられます。

 こちらの心配をよそに、幸泉号は琥太郎をおしのけて餌を独り占めにしようとしたり、運動場の砂に埋もれた草を器用に食べたり、とにかく食欲旺盛。とはいえ、開田高原で初めて幸泉号にあったときの「気の強い馬」という印象はうすれ、私のすがたが見えると寄ってきたり、運動場に入ると後ろについて離れなかったり、穏やかであつかいやすい馬になりました。後は減量……。幸泉号の減量大作戦、がんばります!

 一方の琥太郎は反抗期。まもなく1歳を迎える琥太郎は、子馬から徐々に男馬へと変化し、自己主張が強くなってきました。力もつき、人間の意志にしたがわず、勝とうとして人を引きずることもあります。これは馬の社会であるハレムを意識し始めた馬が見せる行動の一つです。幸いに、琥太郎は私を上位者として見ているようで、反抗してくることはほとんどありません。しかし、隙あらば上位者になってやろうとする殺気を感じることがあります。

 そのため、琥太郎と接するときには常に注意し、何が起きても対応できるようにしています。数か月前は甘えん坊でおとなしかった琥太郎が、こんなに立派になるなんて……。子の成長は本当に早いですね。

 そんな琥太郎ですが、子馬らしさも残っています。糞を取っている私の背後からそっと近づき、鼻で押してきます。私が振り返ると逃げて行きます。遊んでほしいのでしょうね。そこで、馬が仲間を甘噛みするように、私も琥太郎の体を手で軽くつまんでやります。私がやめようとすると、「もっとやって~」という顔をします。しかし、これは同位者に対してやる行動なのですが……。まぁ、琥太郎が喜んでいるならよしとしましょう。

 ぜひ2頭に会いに来てください。餌を食べているすがたを見るなら12時ごろ(日によって13時ごろ)、日向ぼっこをしてリラックスしているすがたを見るなら10時~11時30分ごろ、運動場から寝小屋に帰るすがたを見るなら15時30分ごろおいでください。場所は、子ども動物園の在来馬運動場です。

 また、2008年4月には在来馬の第3弾「野間馬」が来園します。野間馬は愛媛県が原産地。かつて愛媛県の特産物であるミカンの運搬などをおこなっていました。現在約84頭しかいない貴重な馬です。来園個体は、14歳のメスで、名前は「えりか」。葦毛(白色)で、人なつっこく、おとなしい性格だそうです。

 日本の財産ともいえる在来馬。2008年4月には、3頭が在来馬運動場を元気に走り回ってくれることでしょう。乞うご期待!!

・東京ズーネットBBの動画
 「トカラ馬が来園しました」(2007年10月23日撮影)
 「木曽馬『幸泉号』公開!」(2007年11月22日撮影)

〔上野動物園子ども動物園 橋川真弓〕

(2008年02月29日)



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