2024年7月17日更新:
続報について更新しました。
くわしくはこちらをご覧ください。
上野動物園では、「スーリヤ」(メス、1994年生まれ)、「ウタイ」(メス、1998年生まれ)、「アルン」(オス、2020年生まれ。ウタイの子)の3頭のアジアゾウを飼育しています。
2024年7月9日よりウタイとアルンの親子の放飼場を分けての飼育を始めましたので、その経緯についてお伝えします。
ウタイとアルンの親子は、アルンが生まれてからずっと2頭で仲良く過ごしてきました。しかし、アルンが2才を過ぎた頃から、ウタイからアルンに対する攻撃的な行動が目立つようになってきました。様々な理由が考えられますが、離乳してウタイと同じ餌を食べるようになったことで、餌を競合する相手になってきたことが一つの理由になっているのではないかと推測されます。
また、アジアゾウは本来群れで子育てをおこなう動物で、子ゾウは群れの中で母親以外の様々なゾウとも過ごして成長していきますが、ウタイとアルンは母子1対1の関係が長期間続いていることが影響しているとも考えられます。これはウタイとアルンに限らず、群れでの飼育が難しい動物園では時折観られる現象です。
このような状況が日々続く中、体も大きくなり、牙も目立ってきたアルンを毎日相手にしているウタイの負担が大きくなってきていることから、「日中は柵越しに接触できる状況で放飼場を分け、長い時間を過ごす室内では普段通り一緒に過ごせる飼育管理」をおこなうことにしました。この管理は、ゆくゆくはオスとして単独で生活していく(※)アルンの独り立ちへ向けた練習段階でもあります。
※野生のオスは性成熟を迎える頃に群れから離れ、単独生活になります。
現在は、第二放飼場の砂地と、第二放飼場のパドックとで生活の場所を分けています。パドックは屋内の一室と出入り自由にしているので、屋外よりも涼しく、室内で水浴びもしています。午後には砂地とパドックを入れ替えますので、丸1日砂やプールのない場所で過ごすことはありません。
アルンが成長したといっても、夜間アルンが寝ているとき、ウタイはいつも側に寄り添っているなど、母と子の関係が崩れてしまったわけではありません。まだ放飼場を分けることに慣れていないため、ウタイがアルンを心配そうに見ていることもあります。放飼場を分けての管理は、ウタイとアルンがより良く過ごすための一つの手段ですので、今後も状況に応じて管理方法を変更することもあります。
これからもゾウ同士の関係性をよく観察し、ゾウ達にとって最善となる飼育方法を考えていけるよう取り組んでいきますので、温かく見守っていただきますようお願いいたします。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
アジアゾウ「アルン」(2024年4月24日撮影)
2024年7月17日追記:アジアゾウ、アルンの成長(続報)
アルンの成長にともない、母親のウタイとのえさの競合などが見られるようになったことから、ウタイへの負担を軽減することを目的に7月9日から母子を分けての展示を試みてきましたが、一旦中止し、これまで同様に母子同居での展示を再開しました。
分け始めた当初、ウタイはアルンを気にするようすこそありましたが、日中のすごし方はふだんとさほど変わりありませんでした。しかし、アルンと分けられることを理解したようで、日がたつにつれてアルンを気にする行動が目立ってくるようになりました。
もともと、常に母子1対1でいることによるストレスを和らげることが目的でしたので、現時点ではまだ、生活の場所を分けることによるストレスのほうが大きいと判断し、母子を分けての展示は一旦中止としました。
アルンにとっては将来必要になる独り立ちに向けての練習段階でもあり、また、動物園ではいずれかの個体が感染症にかかるなど、個体を分けての飼育管理が急きょ求められる場合もあります。今回はウタイの状態を考慮しアルンとの同居を再開しましたが、さまざまな状況に対応できるように、これからも機会を見て、飼育管理方法の手段を増やしていけるよう努めていきます。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
◎関連ニュース
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アジアゾウ3頭の放飼場での同居について(2023年9月2日)
(2024年07月11日)
(2024年07月17日:続報について更新)