上野動物園で飼育しているアジアゾウの「スーリヤ」(メス、推定30歳)と「アルン」(オス、3歳)の2頭に、同時期に歯の抜けかわりが見られたのでご報告します。
ヒトを含めたほとんどの哺乳類は、古い歯の下から新しい歯が生えてきます(垂直交換)。そして、それは乳歯から永久歯へかわる一時期のみです。
一方でゾウは、生まれたときに生えている臼歯を、後ろから生えた新しい臼歯が前に押し出すことで抜けかわるようになっています(水平交換)。さらに、一生のうちに5回の抜けかわり時期があり、上下左右それぞれで6個の臼歯を1個ずつ順番に使うようになっています。
歯のでこぼこした部分が食べ物をすりつぶす際に少しずつ摩耗していき、十分な働きができなくなるころに後ろの新しい歯が前の古い歯を押し出す、というしくみです。年齢から推定すると、スーリヤは4回目、アルンは1回目の抜けかわりの時期と考えられます。
2024年2月16日、運動場でスーリヤの歯が抜け落ちました。口を開けて確認したところ、上顎の歯は左右どちらも小さくなった古い歯が残っていたため、今回抜けたのは下顎の歯のようです。
スーリヤの抜けた歯
その日から3日後、2月19日にアルンの歯も抜けかわったようです。朝の出舎前におこなっている口腔内のチェックの際に、右上顎の歯が抜け落ちているのが確認できました。スーリヤほど大きい歯ではありませんが、反対側と見比べると歯がないところがわかるかと思います。
アルンの口の中
(赤い丸:今回歯が抜け落ちたところ、黄色い丸:古い歯が残っている)
こちらの歯は室内にいるあいだに抜けたようですが、歯そのものを見つけることはできませんでした。アルンのように歯がまだ小さいうちは、食べている最中に抜けた歯をえさといっしょに飲み込んでしまう場合や、敷きわらやフンなどに紛れてしまう場合も多いため、抜け落ちた歯を見つけるのは難しいことなのです。
また、歯の抜けかわりと聞くと、えさを食べられるのかどうかが気になる方も多いと思います。確かに歯が抜ける直前くらいは食べづらそうにしているようすも見られますが、抜けてしまえば大丈夫なようです。現在はふだんどおりにえさを食べられていますのでご安心ください。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
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