2月27日は「International Polar Bear Day(国際ホッキョクグマの日)」です。
前回に引き続き、上野動物園でのホッキョクグマの繁殖に向けた取組みをご紹介します。
「イコロ」(オス)が来園した翌年の2016年、
初めてイコロと「デア」(メス)の同居に取り組みました。
初めて同居した直後はお互いに警戒していた2頭でしたが、徐々にその距離が近づき、その年の同居期間中にはいっしょにプールで遊ぶようになるほど良好な関係を築いていきました。デアの発情がピークを迎えると、イコロは興奮したようすで鼻を鳴らしてデアを追いかけるようになりました。しかし、デアの方が俊敏に逃げるため、イコロはデアに近づけず、一定の距離を保ち近くをウロウロと歩くだけでした。
繁殖に成功している他園館のペアでも、初めは同様の行動が見られるそうです。交尾に成功しているケースでは、オスは徐々に距離を縮めてメスに接触し、メスもそれを許容して交尾に至ります。お互いに交尾未経験のイコロとデアには、もう少し時間が必要なのかもしれないと思われました。
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逃げる「デア」(上)に対して一定の距離を保つ「イコロ」(下)
そんなイコロが初めてデアにマウント(オスがメスに乗り交尾の体勢になること)したのは、2018年12月26日のことです。マウントの体勢が悪く、交尾が成功しているようには見えませんでしたが、とても大きな進歩でした。翌年以降の同居時はマウントが確認されるようになったことから、デアがイコロを許容するようになってきたのかもしれません。
しかし、これまでデアが妊娠に至っていないことに加えて、交尾に成功している他園館のペアのマウントと比べると体勢が不十分に見えることから、交尾はできていないと思われます。今年も1月にマウントが確認できました。しかし、目視では交尾の成立を判断することは難しく、この後デアが出産の兆候を示すまで交尾が成功していたかはわかりません。
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「デア」(左)にマウントをする「イコロ」(右)
今後もずっとイコロとデアのペアで繁殖をめざしていきたいところですが、2頭の繁殖適齢期を逃さないようにするためには、あらゆる方法を検討する必要があります。繁殖のためにはペアの相性も重要なので、他園館と協力して雌雄を組み替えることや、人工授精を実施することもあるかもしれません。
日本の動物園のホッキョクグマの未来のために、今後も広い視野を持って精力的に繁殖に取り組み、いつの日かみなさまに上野動物園でホッキョクグマの赤ちゃんを見ていただきたいと思っています。そして、当園のホッキョクグマを通じて、野生のホッキョクグマを守るために、CO2削減の取組みや、環境に配慮された商品を積極的に利用するなど、私たちができることにみんなで取り組んでいければと考えています。本日、国際ホッキョクグマの日が、みなさまにとって少しでもホッキョクグマに思いを巡らせる日になれば幸いです。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
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