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アジアゾウの「ウタイ」と「アルン」母子の現在
 └─ 2023/01/29
 2020年10月31日に「アルン」(オス)が誕生し、2年3ヵ月ほど経過しました。初産ということもあり、出産直後は興奮してアルンを受け入れるのに時間がかかった「ウタイ」でしたが、産後3日目で無事に授乳することができ、初めての子育てをしっかりとこなしてくれています。授乳しているようすはとてもほほえましく、飼育担当者としてもいつまでも見ていたい気持ちになりますが、だんだんと離乳の時期が近づいているようです。

 通常野生のアジアゾウは2〜3年ほどで離乳を迎えます。離乳した後もしばらくは母子でいっしょにすごしますが、オスの子は10歳くらいになり性成熟を迎えると、生まれた群れを出ていき、単独かオスだけのグループをつくって生活するようになります。

 では当園のウタイとアルン母子がどのようなようすかと言うと、昨年末あたりからウタイがアルンの授乳を拒む行動が増えてきました。原因として、離乳時期が近づきウタイの母乳の量が少なくなり出にくくなっている可能性や、アルンの牙が伸びてきたことから牙がウタイの乳房に当たって痛がっている可能性などが考えられます。いずれにせよ、アルン誕生から2年が過ぎて、野生のアジアゾウと同じように離乳の時期が近づいてきているのでしょうか。

 また最近は、ウタイに与えている青草や乾草、ワラ、タケなどをアルンが積極的に食べるようになってきました。そのため、ウタイが自分のえさをアルンに取られまいと、アルンのことを蹴ったり、鼻で押したりしてえさを独り占めしようとする行動も見られるようになりました。えさの量を増やすなどして対応していますが、近い将来、今の寝室に2頭ですごすことも難しくなることが予想されます。

 今後も、アルンの成長につれて、ウタイとアルンの関係は徐々に変化していくと思われます。当面はウタイとアルン母子と、単独飼育となっている「スーリヤ」(メス)との同居に向けて取り組み、その後、アルンが独り立ちできるよう母子の距離を少しずつ離していく予定です。アジアゾウの自然な生活を、飼育環境下でもできるだけ築けるように精一杯努力していきますので、今後も上野動物園のゾウたちを見守っていただければ幸いです。

ウタイの隣でワラを食べるアルン。
左下にあるアルンのフンも、以前より大きくなりました
成長中のアルンの牙。
先端の表面が剥がれていますが、今後全体が剥がれておとなの牙になります

〔上野動物園東園飼育展示係〕

(2023年01月29日)



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