2021年6月に誕生したジャイアントパンダの双子「シャオシャオ」と「レイレイ」は無事に1歳を迎え、母親「シンシン」とともに元気にくらしています。上野動物園ではパンダ関連のグッズを多数販売していますが、今回はそのなかのひとつである動物フィギュア(アニア)を飼育係が監修しました。
商品開発担当者から私たちへの依頼内容は、「元となるフィギュアの造形はそのままに、彩色のみを変えてシンシンと双子を再現する」というものでした。グッズ制作に飼育係が深く関われる機会なので、「ぜったいいいものをつくろう」と気合を入れて打合せにのぞみました。
まずはいちばん大きなフィギュアをシンシンに近づけるため、これまで撮りためた写真を見返し、具体的にどこをどう変えるかを検討しました。
体の部分は「白黒模様の形と位置が違うのでは」から始まり、「体毛の汚れは茶色っぽく」「尻はもっと汚れている」「足裏の毛は焦げ茶色」「肉球を灰色に塗り分け」「爪は白くして目立つように」などなど……どんどん出てくる飼育係からの要望に、コストが上がってしまいそうだと苦笑しつつもうなずきメモをとる開発担当者。そして最後にもうひとつ、子育て中の母親シンシンとして象徴的な「授乳中なので、乳首の周りの毛は茶色くしてほしい」という要望も伝えました。
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尻周辺は茶色っぽく汚れている | 足の裏 | 授乳期なので四つの乳首周辺は 茶色く色づいている |
ここまででも飼育係の熱量が伝わったかもしれませんが、続いてシンシンの顔に移ります。顔立ちの特徴がわかるよう、細部の写真を添えて次のようにお願いしました。
「目の周りの黒い毛は傾いた楕円で外ハネ」「鼻はほんのりハート型で存在感あり」「口角を上げてニッコリさせる」指示内容は細部に至り、正直、細かすぎて伝わらないのではないかと思いましたが、写真をひとつひとつ確認するたびに「ああ~、なるほど!」と言ってくれた開発担当者には大変感謝しています。
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鼻はハート形 | 口角は上がっている |
次に取りかかった双子は、シンシンよりも苦戦しました。というのも、双子なだけのことはあり、2頭にはほとんど大きな違いがなく、見分けはついてもその違いを言語化するのが難しかったからです。
今回は180日齢の双子をモデルにしましたが、そのころのシャオシャオはどちらかといえば父親「リーリー」似でくっきりと整った顔立ち、レイレイはシンシン似でやわらかい表情をしていたように感じたため、目の周りの黒い毛の形と位置を調整し、鼻の形を整えて、できる限り2頭の雰囲気に近づけました。

シャオシャオ(左)とレイレイ(右)
体の部分にはシンシンと同じような変更を加えつつ、かかとの白っぽい毛を追加し、体色をシンシンより濃いベージュ色にすることで子どもらしさを表現しました。さらに、シャオシャオの背中にある個体識別用の緑ラインも忘れずにつけてもらいました。
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体毛の赤茶けた部分 | 足のかかとには白い毛 | 個体識別用緑ライン |
そうして完成したフィギュアは、上野動物園のジャイアントパンダらしい、とても再現度の高いものになりました。はじめは、彩色だけでどこまでできるのか……と心配でしたが、飼育係一同も納得の仕上がりです。とくにシンシンの顔は、笑ってしまうほどシンシンらしさを表現できました。

上野動物園オリジナル版アニア(左)と、通常版アニア(右)との比較
「アニア ジャイアントパンダ 上野動物園オリジナルモデル」(税込2,200円)は、上野動物園内ギフトショップと、
通信販売Tokyo Zoo Shopで販売中です。ぜひ実際の彼らと見比べていただき、制作陣の細かなこだわりを感じてもらえたら嬉しいです。

〔上野動物園西園飼育展示係〕
(2022年08月06日)