上野動物園において、絶滅危惧種であり国の特別天然記念物であるニホンライチョウが孵化しましたのでお知らせします。
なお、今回は人工授精による受精卵での孵化となり、ニホンライチョウでは初の成功例です。
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嘴打ち(はしうち)が始まったニホンライチョウの卵 (撮影日:2021年7月17日) | 孵化したニホンライチョウのひな (撮影日:2021年7月17日) |
孵化したニホンライチョウ
孵化数 1羽
孵化日時 2021年7月17日(土)11時
性別 メス
体重 16.4g(2021年7月17日15時時点)
経緯
当園は公益社団法人日本動物園水族館協会の加盟園館として、環境省が2021年3月に策定した「
第2期ライチョウ生息域外保全実施計画」に基づき、飼育下集団における遺伝的多様性の維持のため、今年度から人工採精や人工授精の技術開発に取り組んでいます。これらの技術を確立させることにより、野生や他施設のオスのニホンライチョウを移動させることなく、精液だけの移動により繁殖が可能となることで、ニホンライチョウの保全に貢献することをめざしています。
今回、上野動物園では、5月28日から2016年産まれのオス(N14)から採精した精液を、2017年産まれのメス(N27)に注入する人工授精を実施してきました。その後、N27が6月12日から同月25日にかけて6卵の産卵が認められ、産卵した卵を孵卵器(ふらんき:卵を孵化させるために一定温度であたためる器械)に入れてあたためていたところ、6月20日に産卵した4卵目の卵が受精卵であり、発生が進んでいました。そして2021年7月17日に、1羽の孵化を確認しました。
人工授精から孵化までの経過
2021年4月20日 オスN14から週1~2回、人工採精の試みを開始
5月28日 オスN14から週1回、採精した精液によるメスN27への人工授精を開始
6月12日 メスN27が産卵を開始(25日にかけて6卵産卵)
6月20日 メスN27が4卵目を産卵(今回孵化した受精卵)
6月25日 受精卵を孵卵器へ収容
7月17日 受精卵の孵化を確認
当園での飼育状況(2021年7月20日現在)
5羽(オス3、メス2) ※今回生まれたひなは含みません。
ライチョウ保護増殖事業に参画した2015年以降、計20羽の繁殖に成功しています。
ライチョウ保護増殖事業について
今回の孵化は、絶滅の危険があるニホンライチョウの保護を目的とした環境省と(公社)日本動物園水族館協会が進める保護増殖事業に基づいた取組です。
現在、富山市ファミリーパーク(富山県)、大町山岳博物館(長野県)、那須どうぶつ王国(栃木県)、いしかわ動物園(石川県)、長野市茶臼山動物園(長野県)、横浜市繁殖センター(神奈川県)、当園で成鳥を飼育し、繁殖に取り組んでいます。
今後の取組み
孵化したひなは孵化後2週間程度が特に体調を崩しやすいため、これまでのライチョウの孵化育雛(いくすう)の経験を生かし、注意深く飼育および観察をしていきたいと考えています。今後のひなの状況については、随時ウェブサイトなどでご案内します。
(2021年07月20日)