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希少種展示が普及啓発や保全に果たす役割──ニホンライチョウを事例とした研究論文が発表されました
 └─2021/04/27
 日本アルプスの高山地帯に生息するニホンライチョウ(Lagopus muta japonica)は、世界各地の寒冷地に広く生息するライチョウ(L. muta)の中でもっとも南に生息する亜種です。

 ニホンライチョウは温暖化や生息地破壊の影響により近年、その数が急速に減少しています。環境省と公益社団法人日本動物園水族館協会は協定を結び、2014年からその生息域外保全を推進してきました。上野動物園でも2015年から飼育を開始し、さらによく知ってもらうため2019年3月から一般公開を始めました(ニュース)。

共同研究実施時に飼育展示していた
ニホンライチョウ(2019年3月撮影)
ライチョウ初公開当時のようす
(2019年3月16日撮影)

 ニホンライチョウにかぎらず、動物園ではさまざまな希少種を展示していますが、展示が普及啓発にどのような効果を果たしているか、客観的に知ることは困難でした。しかし、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構の深野祐也助教や私たちニホンライチョウ飼育施設の職員などとの共同研究により、動物園におけるライチョウの展示がマスメディアの報道を通じて、動物園に来園しない人も含む多くの人々にこの希少鳥類の現状を伝え、保全を推進する大きな影響力をもっていることが明らかになりました。詳細は下記の発表論文やウェブサイト等をご覧ください。

 これからも私たちはさまざまな方法で希少種の保全に向けて情報発信をおこなっていきます。

発表雑誌名Animal Conservation
論文タイトルDebut of an endangered bird in zoos raises public interest, awareness and conservation knowledge of the species
発表者深野祐也(東京大学 大学院農学生命科学研究科 附属生態調和農学機構 助教)
曽我昌史(東京大学 大学院農学生命科学研究科 生圏システム学専攻 准教授)
福田 真(環境省 自然環境局野生生物課 計画係長)
高橋幸裕(東京都恩賜上野動物園 飼育展示課東園飼育展示 担当係長)
小山将大(いしかわ動物園 飼育展示課種の保全グループ 技師)
荒川友紀(那須どうぶつ王国 動物管理部第一課 保全チーム)
宮野典夫(市立大町山岳博物館 指導員)
秋葉由紀(日本動物園水族館協会生物多様性委員会ライチョウ計画管理者/
     富山市ファミリーパーク 動物課 衛生診療係長)
堀口政治(富山市ファミリーパーク公社 動物課 課長代理)

東京大学のプレスリリース

〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕〕

(2021年04月27日)



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