ニュース
人が入っても大丈夫!? シュモクドリの巨大な巣
 └─ 2019/07/27

 上野動物園のツル舎ではシュモクドリを展示しています。その名前は、長い後頭部の羽毛とまっすぐに伸びた嘴が撞木(しゅもく:鐘を叩く金槌のようなもの)に見えることから名づけられたといわれています。


シュモクドリ

 多くの鳥が数日から数週間で巣をつくるのですが、シュモクドリは1ヵ月以上かけて巣を完成させます。その理由は巣の大きさにあります。野生では、8,000本もの枝や泥などを使って、大きいもので高さ2m、重さ100kgにもなる巨大な巣をつくりあげます。生息地の南アフリカでは、卵やひなを狙う外敵が多いために、彼らはこのような巨大で頑丈な巣をつくると考えられています。

 そこで私が気になったのが、実際に動物園のシュモクドリは何本の枝を使って、どれくらいの大きさの巣をつくるのかということです。繁殖期に入ってから、展示場に予め数えておいた巣材用の枝を置き、シュモクドリが運んだ枝の数を調べてみました。28日間かけてオス・メスの2羽は交互に枝を運んでは組んでいき、結果、使用した枝は1,478本、高さ90cmほどの大きな巣を完成させました。これは2~3歳の人間の子供の平均身長とほぼ同じ大きさで、野生のものよりも小さな巣ではありますが、鳥がつくったようには見えないほど立派なものです。


完成した巣

 また、日々営巣を観察する中で、使う枝の選別や使い方の変化を知ることができました。つくり始めには太い枝を好んで使っていたのが、天井となる巣の上部に向かうにつれて細い枝を使っているようでした。基礎となる部分を頑丈にし、天井は細かく枝を組んで雨を防ぐようにしていると考えると、とても精巧な建築物だと思えました。

 シュモクドリは巣を完成させたのですが、今回はまだ産卵を確認できていません。しかし、彼らは抱卵のため以外にも寝床として巣を利用していますので、巣の展示はしばらく続けます。さらに、7月23日から展示場の前には巣をつくるのに使用した枝の数と同じ1,478本の枝を山積みにして展示しています。


枝の展示

 積み上げることで、いかに多くの枝を使用したのかが実感できると思います。上野動物園のシュモクドリを見る機会がある際には、精巧な建築物である巣と、それをつくるのに使用した枝の多さもぜひご覧ください。


〔上野動物園東園飼育展示係 青木孝平〕

(2019年07月27日)


ページトップへ