2016年2月初旬から4月下旬まで、上野動物園では屋外運動場の柵などの改修工事をおこなっていたため、約3か月のあいだ、キリンとオカピが見られるのは室内だけでした。
キリン舎
キリンの屋外運動場にある古い噴水型の水飲み場や、餌場のコンクリートを工事で壊しているときは、音が室内まで響き、キリンはときどき外を気にするような素振りを見せ、落ち着きをなくすこともありました。
外が静かなときは、キリンが気分転換できるよう、室内から出ないよう「馬栓棒」(ませんぼう:動物がそれ以上進まないように止めるための仕切り棒)をしたまま外が見られるようにしました。一方のオカピは、金属柵の切断などの大きな音がしても、扉についている小さな覗き窓から工事のようすを見るほどの落ち着きようでした。
寒い時期だったので、暖かい室内で過ごすことは苦痛ではないようでしたが、私たち飼育担当者からすると、体の汚れが気になるようになりました。オカピは床材として敷いてあるチップのほこりが体にたまるので、コミニュケーションもかねて、素手で体中をなでてきれいにしましたが、さすがにキリンの体についた砂ぼこりはどうしようもありません。餌箱に顔を入れるときには、顔をあてて掻くようにしていました。首の根元は間仕切りの扉を使って自分で掻いていましたが、人の手ではなんともきれいにしようがありませんでした。
オカピ舎
4月25日の休園日に工事が終了し、午後から屋外運動場に出しました。キリン、オカピは久しぶりの外気を吸い、日光を浴びて屋外を歩きまわっては、運動場周囲の、伸びて届くようになったイチョウやネズミモチの葉に舌を伸ばしていました。数日後に雨が降り、「丸洗い」とまではいきませんが、汚れが少し落ちたようです。
〔上野動物園西園飼育展示係 深谷高司〕
(2016年05月13日)