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シロフクロウの繁殖大作戦!
 └─2016/05/06

 上野動物園「ホッキョクグマとアザラシの海」エリアの「水と氷の回廊」にあるシロフクロウ舎には、2014年3月に多摩動物公園からメスが来園するまでオス1羽を展示していました。雌雄がそろった当時、メスはまだ1歳未満と若く、繁殖にはいたりませんでしたが、翌年以降、私たちはシロフクロウの繁殖を目指して準備を整えてきました。

 野生のシロフクロウは北極圏周辺に生息し、おもにレミングと総称されるネズミのなかまや小型哺乳類、鳥類を食べています。極地という厳しい環境下では、一年間安定して獲物を得るのが困難です。しかし、レミングが大量繁殖した年はシロフクロウの繁殖成功率も上昇するといわれています。彼らの繁殖には食べたネズミの量が鍵になるのです。

 動物園のような飼育下では、日々安定したえさを確保できますが、本来のシロフクロウの食生活を再現するためには獲物にありつけない日=絶食日が必要です。これまでも絶食日は設けていましたが、2015年から定期的に絶食日を設定し、給餌するマウスの量も年間を通して変化をつけることにしました。

 この方法を始めてまもなく、オスがメスにネズミを“プレゼント”する求愛給餌が見られ、交尾も確認されました。しかし、2015年度は残念ながらメスの営巣や産卵は見られませんでした。繁殖期終了後、本年度(2016年度)の繁殖に向け、ネズミの給餌量を少しずつ減らし、不足分は馬肉や鶏頭を増やして補いました。

 また、環境も整備しました。北極圏に生息するシロフクロウは暑さに弱く、カビにも敏感な動物です。しかし、繁殖期は6月頃なので、日本では高温多湿の梅雨の季節にあたります。そこで、展示場の照明を2月初旬から24時間点灯し、人工的に日長条件を調整して、繁殖期を早める試みを進めました。さらに、交尾の際に邪魔になりやすい総排泄腔のまわりの羽を切ったりして、準備を整えてきました。

 24時間点灯飼育を始める1か月前からネズミの量も増やし、また、給餌するネズミにも、ビタミン剤やミネラル剤、カルシウム補給のためのイカの甲などを積極的に与え、ネズミ自体にも栄養を補給しました。


 2016年2月末からオスによる求愛給餌が始まり、3月25日には2016年初の交尾を確認。そして、4月8日からメスが砂の上で伏せ始めた後、卵を確認できました。メスも熱心に抱卵をしています。オスもメスを守るのに必死で、飼育係に対する威嚇も激しく、2羽の絆を実感する毎日です。

 2羽にとっては初繁殖なので、飼育係もできるだけ刺激しないよう、そっと見守っています。ひなの誕生につながるかどうかわかりませんが、一歩ずつ繁殖成功へと向かっています。抱卵しているときのメスは見えづらくなってしまいますが、どうぞあたたかく見守ってください。

〔上野動物園東園飼育展示係 宇野なつみ・吉村映里〕

(2016年05月06日)


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