「アルマジロ」とよばれる動物の名はみなさんよくご存知と思います。その一般的なイメージは、背中が硬い甲羅のような皮膚におおわれていて、身を守るためにボールのように丸くなる動物──といったところでしょうか。
アルマジロのなかまの一種が上野動物園の小獣館にいる「マタコミツオビアルマジロ」です。「マタコ」は地名、「ミツオビ」は背中の中央にある蛇腹のような帯の数が3本という意味です。帯の数が和名につけられているアルマジロは、9本のココノオビアルマジロ、6本のムツオビアルマジロなども知られています。
ただし、約20種が知られるアルマジロの中で、ボールのように丸くなることができるものは、じつはマタコミツオビアルマジロ
Tolypeutes matacus とミツオビアルマジロ
Tolypeutes tricinctus の2種だけです。
マタコミツオビアルマジロ親子。色が薄い方が子ども
今年2015年の6月7日、上野動物園の小獣館にいるマタコミツオビアルマジロのメスが展示場の巣箱の中で出産しました。子は生まれたときから親と同じ姿をしていて、丸くなることもできます。ただし、子の背中の甲はとても柔らかく、体の色はだいぶ薄くて白っぽい色をしています。
親が落ち着かなくなると子育てをやめてしまうので、とくに異状がないかぎり巣箱はのぞきません。生後1か月ほどもすると、日中でも巣箱から子が出てくるようになります。出てくるのはわずかな時間ではありますが、子の姿や行動を観察できるようになります。
「マタコ『ミツオビ』アルマジロ」という名だが、今回生まれた子は帯が4本ある
その後、子が巣箱から出ている時間が長くなり始めたころ、意外な発見をしました。背中の帯が4本あります! ところが調べてみると、マタコミツオビアルマジロの帯の数は「2から4本」という記述があり、驚きは少しトーンダウンしたのでした……。勉強不足でした。世界は知らないことにあふれていますね。
今の場所でいつまで展示を続けるか、今のところ決まっていませんが、「ヨツオビ」のマタコミツオビアルマジロを上野動物園の小獣館で観察してみませんか。
〔上野動物園西園飼育展示係 木村隆司〕
(2015年09月18日)