絶滅の危機に瀕する日本のライチョウ。ライチョウは20種以上の亜種が世界に分布していますが、中でも日本のライチョウは最南端に位置する亜種です。かつて、最終氷期に分布を広げ、温暖化が進むとともに、日本では高山帯に取り残されました。
しかし、日本のライチョウは絶滅が心配されています。上野動物園では、ライチョウの繁殖を目的としてこれまで、ノルウェーのスバールバルライチョウの繁殖に挑戦し、2008年に飼育下での繁殖に成功しました。
今月2015年6月5日、長野県と岐阜県の県境にある乗鞍岳で「抱卵前」の卵を採取。上野動物園に運びました(
詳細はこちらです)。
そして昨日2015年6月27日から本日28日にかけて、全5卵の孵化に成功しました!
孵化したライチョウのひなたち(番号は孵化の順番ではなく個体固有の番号)
国内では「孵化直前」の卵を巣から採取して人工孵化させた例はありますが、それよりも早いタイミング、つまり「抱卵前」に採取した卵から人工孵化に成功したのは、今回が初めてです。
◎動画:孵化した日本産ライチョウひな(2015年6月28日撮影、30秒)
孵化した5羽の性別は不明です。体重は16.7~18.7グラム。孵化日時は6月27日午後6時台から翌28日午前4時台です。
◎ライチョウ保護増殖事業について
環境省と公益社団法人日本動物園水族館協会は、日本産ライチョウの保護を目的とした保護増殖事業を進めています。今回の上野動物園でのライチョウの繁殖は、この保護増殖事業にもとづいた取組みです。なお、同じく乗鞍岳から採取したライチョウの卵(孵化直前に採取した卵)が、2015年6月27日、富山市ファミリーパークで孵化しました。
◎今後の取組み
孵化後約2週はとくに体調をくずしやすいので、これまでのスバールバルライチョウの孵化や育雛の経験を活かし、注意深く飼育、観察します。
◎孵化までの経過
2015年
6月5日 乗鞍岳から5卵を採取し、上野動物園へ輸送。
6月6日 上野動物園到着後、孵卵器に入れる。
6月18日 卵内での発生を確認。
6月27日 午前7時 3個の卵の嘴打ちを確認。
6月27日 午後3時 残り2卵の嘴打ちを確認。
6月27日 午後6時 1羽目が孵化。
6月28日 午前0時 2羽目が孵化。
6月28日 午前2時 3、4羽目が孵化。
6月28日 午前4時 5羽目が孵化。
(2015年06月28日)