昨年(2014年)の11月17日、上野動物園両生爬虫類館の飼育予備室で作業をしていると、「カチカチカチ」という聞きなれない音が聞こえてきました。音のもと探してみると、南米北部の河川や湖に生息し、一生を水の中で過ごすピパというカエルの鳴き声でした。
カエルはおもに、オスがメスを引きつけるときなどに鳴きますが、鳴き声は種類によってちがいます。
上野動物園の両生爬虫類館では、日本産のものから外国産のものまで、さまざまな種類のカエルを飼育しており、いろいろな鳴き声が聞こえてきます。しかし、ピパの鳴き声はカエルの鳴き声とは思えないような音です。音とともに動画を撮ったので聞いてみてください(13秒)。
この鳴き声を出すとき、ピパは水中でまったく動いていません。一体どうやってこの音を出しているのでしょうか。カエルの鳴き声はおもに、大量の空気を吐き出す際、喉にある声帯が振動することで発せられます。しかし、ピパには声帯がなく、喉にある軟骨でできた特殊な器官でこのカチカチという音が作られていると考えられています。
とても不思議な鳴き声(?)ですが、不思議なのはそれだけではありません。ピパの別名「コモリガエル」と呼ばれるとおり、メスが産んだ卵はメスの背中の皮膚に取り込まれ、その中でカエルになり、背中から出てくるというユニークな保育方法で知られています。その不思議な保育方法が見られるよう、繁殖をめざして飼育に取り組んでいきたいと思います。
〔上野動物園は虫類館飼育展示係 船藤史〕
(2015年06月12日)