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イリエワニはなぜ口を開けているのでしょう?
 └─2015/03/29

 イリエワニは陸に上がって日光浴をすることがあります。でもそれは、のんびり昼寝をしているのではなく、ワニのくらしに必要で大切な行動なのです。

 哺乳類や鳥類は食べ物から得られるエネルギーを使って、自分に合った体温を維持していますが、爬虫類であるワニにはそうしたしくみがありません。もっぱら太陽の光を利用して体を温めていて、周囲の温度が変化しても体温はワニに都合のいい一定範囲に保たれていることがわかっています。体温維持を食べ物ではなく太陽に頼っているため、食事が少なくてすむエコなくらしなのです。


日光浴中のイリエワニ。口を大きく開けている

 さて、日光浴中のワニはしばしば口を大きく開けたままじっとしています。なぜ口を開けるのでしょう? その理由として、表面積が増えるので効率的に温まる、あるいは口の中の皮膚が薄いので効率よく温まるという説や、口の中の寄生虫を鳥に食べてもらうという説、ほかの個体への信号になっているという説など、諸説あります。

 もっとも信頼できそうなのは、頭が熱くなり過ぎるのを防ぐために放熱させているという説です。せっかく温まった体を水の中に入って冷やすことなく、大事な脳などは過熱しないように、口を開けて空気に触れさせ、また、水分を蒸発させて冷やしている行動だという考え方です。

 両生爬虫類館で展示しているイリエワニを観察すると、日光浴は春と秋に多く、太陽光に熱が感じられるような強い日差しの際、展示場の陸上部分に直射日光があたる11〜15時くらいの時間帯によく見られます。いったん上陸すると何時間も続けることが多く、その間に口を開けたり閉じたり、また体の向きを変えたりして微調整しています。

 冬に日光浴があまり見られないのは温まるような日差しがないからだと思いますが、意外なことに真夏もほとんど日光浴が見られません。熱くなり過ぎるからでしょうか。

 条件が整っていても毎日見られるわけではありませんが、日光浴をする姿がこのところ頻繁に見られるようになってきました。よく晴れた日に、ワニの日光浴を見にいらっしゃいませんか? 口の中や歯もよく観察できますよ。

〔上野動物園は虫類館飼育展示係 荒井寛〕

(2015年03月29日)


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