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バクは何を食べる? アメリカバクの鼻に注目
 └─2015/01/17

 2015年が始まり半月がたちました。みなさんはどのような初夢を見ましたか? いい夢で年の初めを迎えられた方もいれば、悪い夢で憂鬱な幕開けをされた方もいらっしゃると思います。

 見たくない夢を見てしまったとき、「ゆうべの夢は獏(バク)にあげます」と3回唱えると悪い夢から逃れられるという風習が一部の地域であるそうです。

 古代中国には、想像上の動物「獏」を守護獣として悪霊祓いに使った風習があったそうですが、その獏が室町時代の日本で悪夢を祓う霊獣として信じられ、民衆に広まったとされています。それが、現存するバクと混同されているようです。

 上野動物園にもアメリカバクがいますが、展示施設の前で、必ずといっていいほど「バクは夢を食べるんだよね」という会話が毎日のように聞かれます。しかし、実際にはリンゴやバナナなどの果物、ニンジンやサツマイモなどの野菜、牧草、固形飼料、人の背丈ほどもあるカシやネズミモチ等の枝葉を食べています。

 
左:鼻を伸ばして…… 右:たぐり寄せてくわえます

 とくに、枝葉は展示場でもよく与えているので、食べるところが見られます。自然界でも枝葉をよく食べますが、1本の木から少量しか食べず、ジグザグに歩きながら採食すると言われていています。上野動物園でも、枝葉を口に一杯くわえながら「食べ歩き」をするバクの姿を見ることができます。

 また、食べる際には鼻を器用に使っていることがよくわかります。上唇といっしょになったバクの鼻は長く、大変柔軟性があります。人が手で物をつかんでたぐり寄せるように、バクは鼻で枝などを口元までを引き寄せます。この鼻はほかにも、優れた嗅覚によって歩く方向を嗅ぎ分けたり、水中でシュノーケルの役割を果たしたり、さまざまな場面で大活躍します。

 この特徴的な鼻は来園者の目にもとまるようで、自由自在に動くバクの鼻を見て、「ちょっと変じゃない?」と言いつつ、すっかり見入っている方もいます。ほかの動物では見られない、バクの魅力の一つです。

 動物園のバクがおいしそうに枝葉をほおばる姿をご覧になり、悪い夢のことは忘れてください!?

〔上野動物園東園飼育展示係 徳田雪絵〕

(2015年01月17日)


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