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スマトラトラ「ケアヒ」の近況
 └─2014/07/04

 上野動物園では現在、スマトラトラをオス2頭、メス2頭、計4頭飼育しています。

 2014年3月まではオスの「クンデ」という個体がいましたが、繁殖計画のため名古屋市の東山動植物園へ移動しました。そして今回、ハワイのホノルル動物園から来園し、仙台市八木山動物公園で飼育していたオスの「ケアヒ」が来園しました。

 ケアヒは2014年5月19日に仙台から陸路で上野動物園に到着しました。しかし、すぐにほかのトラがいる獣舎へ入るわけではありません。まずは動物病院で検疫をおこない、病原菌などをもっていないことを確認した後、獣舎へ搬入します。動物が来園してもすぐに公開できないのは、検疫によって最大限の安全対策を施すためです。

 そして、6月2日に検疫が終了し獣舎へ搬入しました。搬入後ケアヒは思いのほか早期に放飼場へ出すことができました。初対面ではおとなしく警戒心が強い個体という印象を受けましたが、環境に慣れるまでが早く、ほかの個体と比べても順応性が高いように思われました。最初は少しおどおどしたところもありましたが、寝室と放飼場の移動をスムーズにこなし、予定では1か月ぐらいのつもりが、約20日で公開にこぎつけることができました。 

 現在、展示中も落ち着いていて、食欲も旺盛なので一安心といったところです。八木山動物公園では繁殖の実績があり、メスに対しても友好的なので将来有望です。今後は、飼育中のメスとペアリングをおこない、繁殖計画を進めていく予定です。これからのケアヒの活躍にご声援をよろしくお願いします。 

 スマトラトラは絶滅の危機に瀕しており、野生の生息数はおよそ300頭。動物園での飼育数も少なく、日本国内での飼育数は14頭のみという状況です。生息地のスマトラ島では森林の破壊が刻々と進み、個体数が増加したとしても生息場所がないのが現状です。動物園では、個体維持および繁殖を進めるとともに、トラや動物たちの置かれている現状を知らせる普及活動の役割も担っています。ご来園の際は、動物を「見る」だけではなく、行動や姿などからその動物の生息地などに思いを巡らせ、現状に興味をもっていただければ幸いです。

写真上:トラ舎に無事搬入した当日のようす
写真下:初めて放飼場に出た「ケアヒ」

〔上野動物園東園飼育展示係 川上壮太郎〕

(2014年07月04日)



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