ニュース
トカラヤギ出産秘話
 └─2014/06/27

 上野動物園子ども動物園のなかよし広場にいるトカラヤギたちは、ほかの動物園に搬出するなどで数が減っていました。イベントなどのために子ヤギが欲しいところでしたが、種オスの代替わりのタイミングに当たり、ちょうど子ヤギがいなくなっていました。

 そんなおり、先日約2年ぶりにヤギの出産がありました! 産んだのはもうすぐ3歳になる「スピカ」という個体です。

 出産予定日は2014年6月7日でしたが、6月3日午後に広場で陣痛が始まり、すぐに産室として準備しておいた部屋に収容したところ、約3時間半で順調に1頭目を出産しました。すぐに2頭目の出産が始まりましたが、外に出てきたヒヅメが裏返しの状態でどうやら逆子のようです。どうしたものかと観察しているうちに1頭目が自力で立てるようになり鳴き始めました。しかし母ヤギは取込み中、授乳はまだできません。

 スピカはしきりにいきみ、少しずつ2頭目が出てきましたがスピカが疲れてしまい、お尻を壁に当てた状態で座ってしまいました。あまり時間が経つと母子に大きな負担がかかるので、2頭目は人の手で引き出しました。胎膜をはがしてやるとちゃんと呼吸を始め、しばらくすると小さい声で鳴き、出産後20分ほどで立てるようになりました。

 これでひと安心ですが、スピカには子どもたちにしっかりと授乳してもらわなくてはなりません。しかしスピカは初産のためかなかなか落ち着かず、子どが寄っていくと頭突きをして追い払う始末。そこでいったん観察を中止し、スピカを落ち着かせることにしました。

 約1時間後に見てみると、子どもたちは授乳されないまま座ってしまうようになりました。今回の子は小さく生まれたため、早く乳を飲ませたほうがいいと判断し、スピカを動かないようにおさえ、順番に授乳させました。無事に初乳を飲むのを確認し、これでようやく安心です。
 哺乳類は授乳することで「母親スイッチ」がオンになるといわれていますが、どうやらスピカにもスイッチが入ったようです。子どもたちを追い払うこともなくなり、体をなめてやるようになりました。なお、子どもの性別は2頭ともメスでした。

 翌日からも授乳が確認されもう安心と思いましたが、1週間後くらいから子の体重が減り始めました。母乳の量が足りないようなので補助的にミルクを与え、その後は2頭とも順調に体重が増えています。

 現在は、午前中ヤギ舎前の一角で親子を展示しています。まだまだ体が小さいので広場デビューは当分先です。徐々に慣らしイベントなどに出す予定です。跳んだり、走ったり、乳を飲んだり、2頭寄り添って休んだり……小さくてかわいい子ヤギでいるのは今のうちだけです。ぜひ会いにきてください。

 子ヤギたちには、かわいい名前を付けようと今みなで思案中です。

写真上:1頭目を出産、まだ胎膜がついている
写真中:ミルクを哺乳中
写真下:外のスペースで展示中です

〔上野動物園子ども動物園係 井上智右〕

(2014年06月27日)



ページトップへ