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スバールバルライチョウ、真冬の産卵
 └─2013/12/20

 みなさんの衣替えの時期はいつですか? 季節の変わり目で暑さ、寒さが厳しくなってきた時期に合わせておこなう方が多いのではないでしょうか?

 鳥類の場合、衣といえる羽の生えかわりのことを「換羽」(かんう)といいますが、換羽は一般的に繁殖期の終わりから始まります。多くの鳥たちは春から初夏にかけて繁殖し、その後に換羽が始まるのですが、繁殖も換羽も季節や温度ではなく日照条件に左右されています。そして日照時間は自然の太陽光のみではなく、室内照明などでもコントロールすることが可能です。

 上野動物園のホッキョクグマとアザラシの海のエリアでは、スバールバルライチョウをモデルに「換羽」をテーマにした展示をおこなっています。

 スバールバルライチョウは、北極圏に生息するライチョウの亜種なので、日本に生息するライチョウに比べて白い羽(冬羽)の時期が長い種類です。この特性を活かし、来園者がいつでも冬の白い羽のライチョウを観察できるような展示を考えました。そのためにバックヤードで室内照明を半年間ずらし季節を逆転した環境で飼育している個体がいます。この方法で夏に冬羽の、冬に夏羽のライチョウを比較しながら展示することができるようになりました。

 室内照明で季節を逆転させると、12〜1月が北極圏の夏の白夜の時期になります。ふつうに飼育している個体は日本の真冬にいますが、季節逆転の個体はただいま初夏の繁殖時期を迎えています。

 2013年もメスが11月22日、25日から産卵を開始しました。1羽に擬卵(偽物の卵)や産卵した卵を預けたところ、抱卵に近い行動も確認できています。抱卵時に見られる大きな排泄物(抱卵糞)なども確認できました。

 東京の真冬に北極圏に生息する夏羽のライチョウを展示していますので、来園の際は、ぜひのぞいてみてください。なお、産卵中のメスは神経質になるため展示を見合わせています。しばらくの間、展示は季節逆転個体、通常飼育個体ともにオスのみとなります。

写真上:季節逆転飼育で夏羽のスバールバルライチョウのメス
写真中:産卵した卵
写真下:(左)抱卵時の巨大な排泄物(右)通常の排泄物

〔上野動物園東園飼育展示係 高橋幸裕〕

(2013年12月20日)



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