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アシカ「チャッピー」の子の介添え保育
 └─2013/07/19

 上野動物園のカリフォルニアアシカ「チャッピー」(17歳)と「カコ」(19歳)の子どもたちは、元気いっぱい成長しています。

「カリフォルニアアシカの出産」(2013年06月28日)
・東京ズーネットBB動画「カリフォルニアアシカ2頭誕生」

 今回はチャッピーと生まれた子のエピソードをお知らせします。

 今ではチャッピーの子育てを安心して見守ることができますが、じつは出産後数日間は、チャッピーの乳の出がよくありませんでした。そこでしばらくは子のようすを注意深く観察し、1週間ほど人工的にミルクを飲ませました。

 アシカの子は、生まれてすぐに母親の乳首に吸い付いて乳を飲み始めます。乳首は2対あり、子はそれに順番に吸い付き、時間は1回の授乳で数分ほどです。しかしチャッピーの子は乳首に吸い付いている時間が長く、乳首も同じ場所を多く使っている印象があったため、乳があまり出ていないのではないか?という疑いをもちました。

 同時期に生まれたカコの子と比較しても、数日で体型に差が出始めてきました。しかし、吸い付いた乳首の先端から白い乳らしきものが観察できていたので、乳量が足りないと判断し、親から完全に分離するのではなく、通常は母親に任せて1日に2回親から離してミルクを飲ませる方法(介添え保育)をとることにしました。

 母親から子を分けるのは一苦労で、母親に餌を与え、その隙に担当者が子を保育場所に連れ出します。しかし、途中で母親が気付くとものすごい勢いで追いかけてくるので、担当者は子を抱えて走り、安全な場所まで必死に逃げます。1日2回これを続け、毎回ヒヤヒヤものでした。

 子にはイヌ用の哺乳瓶を使って授乳しました。お腹は空いているはずなので哺乳瓶にもすぐ慣れて吸い付くだろうと考えていましたが、まったく慣れず、半ば無理やりくわえさせ飲ませたので、1回の授乳量は20ミリリットル程度の少量です。

 子にミルクを与えると同時に、母親には乳の出がよくなるよう脂肪分の多い魚をたくさん与えるようにもしました。

 介添え保育1週間で、緩やかですが毎日体重が増えました。そこで数日母親だけに任せてみたところ、幸い体重は増加し体型も改善されたので、完全に介添え保育を中止しました。

 現在は、この子はカコの子と一緒になって泳いだり潜ったりして遊ぶ時間が増えてきています。まだ、ぎこちない泳ぎ方ですが、あっという間に上達することでしょう。そんな成長過程をご一緒に観察していきましょう。

写真上 左:チャッピーの子、右:カコの子
写真下 哺乳瓶を使って授乳中

〔上野動物園東園飼育展示係 齋藤圭史〕

(2013年07月19日)



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