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マレーグマ「フジ」の独り立ち
 └─2013/07/12

 上野動物園のマレーグマ「フジ」が生まれたのは2011年11月です。1年7か月の間、母親「モモコ」と寝食を共にしていましたが、このたびモモコと離れ1頭での生活を始めました。

 マレーグマの親子は出産後2年ほど一緒に生活するといわれています。親子がいつまでも一緒にいると、母親に発情が来ず、次の繁殖に向かうことができないという問題が発生します。そこで1年を過ぎたころから、親子をわける練習をしてきました。

 今回、時間をかけて徐々に親子の距離を離していく方法をとりました。野生では、親子そろって行動していたものが、子あるいは親が距離をとるようになります。その距離が徐々に伸び、やがて独り立ちを迎えます。しかし、動物園という空間の限られた施設では動物が自分たちで徐々に距離をとることは困難なので、飼育係が親子の距離を段階をふんで伸ばし、本来親子があるべき状況に近くなるまで離していきました。

 初めは、寝室で餌を食べるときだけ部屋をわけることにしました。きっかけは、モモコの餌をフジが横取りしようとしたときにモモコが怒って食べさせないということが続いたためです。この時間を少しずつ伸ばしていき、次に時間をずらして放飼しました。さらに次の段階として別々に放飼しました。しかし、お互いに姿が見えない時間が長くなると落ち着かなくなるため、フジが放飼場にいるときは、寝室にいるモモコに会いに行けるよう、放飼場と室内の出入りを自由にしました。そして最終的には完全な分離です。臭いや鳴き声などお互いの存在が分かってしまうと落ち着かなくなると考え、離れた部屋に収容しました。このことがよかったのか、無事親子わけが完了しました。

 これからは、フジが大人にむけて1頭での生活を始めます。モモコの愛情をたっぷりうけて大きく成長したフジが、これからどのような成獣になっていくか一緒に見守っていきましょう。

写真:独り立ちした「フジ」

〔上野動物園東園飼育展示係 齋藤圭史〕

(2013年07月12日)



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