2012年4月13日、上野動物園子ども動物園の木曽馬「幸泉」が2度目の繁殖のため、生まれ故郷の木曽馬の里へ行きました。幸泉は3年前に初桜を出産していますが、その初桜も今年3月20日で2歳になり親離れしてきたところなので、また幸泉に子どもを産ませようという計画です。
移動当日の朝、幸泉は自分だけ外へ出してもらえないことを不審に思ったようで、しばらくの間いなないて仲間を呼んでいました。群れ動物である馬は、1頭でいると不安になるので、この日はなるべく近くに人がいるようにして落ち着かせました。
やがて幸泉を乗せるための馬運車(ばうんしゃ)がやってきました。幸泉を迎えに行くと「やっと出してもらえる」とばかりにぐいぐい歩いていきます。しかし途中で何か違うと気付いたようで、車の手前でぴたりと立ち止ってしまいました。担当者が綱を引き木曽馬の里のスタッフがお尻を押しながら、何とか乗せることができました。また戻ってくるとはいえ、少し寂しい気持ちになりました。
一方、残されたほかの在来馬たちは、幸泉がいないことに気付いているのかいないのか、まったく何の反応もありませんでした。とくに初桜は母親がいなくなったにもかかわらず、のんきに昼寝をしていました。
現在、日本には8種類の在来馬(昔から日本にいた馬)がいて、子ども動物園ではそのうちの4種類を飼育しています。在来馬は、長年人の役に立つために活躍してきましたが、車や機械の普及により需要が減ったため、数がどんどん減ってしまったのです。
子ども動物園では、より多くの来園者に在来馬について伝え、その保存および繁殖に向けての活動を理解していただきたいと考えています。
幸泉が子ども動物園に帰ってくるのは6月ごろの予定です。しばらく幸泉は留守ですが、近ごろ母親に似てきた初桜をかわいがってください。
〔上野動物園子ども動物園係 渡邊葵〕
(2012年04月20日)
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