ニュース
新施設オープン、ホッキョクグマひさしぶりの登場
 └─2011/11/26

 上野動物園の新ホッキョクグマ舎は、以前の展示よりも大きく、広々とした空間でクマが過ごすことができ、来園者の方にもクマの動きをいろいろな角度から見ていただけるようになっています。とくに大きい方の放飼場では、プールをぐるっと囲むようにして室内に観覧通路がつくられているので、ガラス越しにクマの泳ぐ姿をごらんになれます。

 新しい放飼場の広さや設備は現在主流になっているカナダの飼育基準を採用し、クマが快適に過ごせるように設計されています。

 しかし、決して広くはない当園の敷地を最大限利用しようとしたため、動物舎の構造が多少複雑になり、寝小屋は放飼場の下になりました。クマたちが外に出るときは、寝室から長い通路を通って放飼場まで行くことになります。大変だったのは、この状況にクマをうまく慣らすことでした。

 新しい動物舎で飼育を始めるときは、最初にまず動物が寝小屋と放飼場の構造を憶えてスムーズに出入りできるよう馴らします。今回も完成からオープンまでの期間を馴らすために充てるはずでした。しかし、震災の影響などもあり、工事期間がずれ込んだため、馴らし期間が1週間ほどしかありませんでした。

 出入りの練習は、クマが混乱しないように、またなるべく早く慣れてもらうため一頭ずつ段階的に始めました。

 まずオスの「ユキオ」(24歳)からです。餌を使って、寝小屋と通路の間を行ったり来たりさせることから始めました。訓練4日目、寝小屋と通路の出入りに慣れたところで、通路の先にある放飼場に出してみました。私たちが一番心配していたのは、新しい放飼場に出たことに興奮し、寝小屋に帰ってこなくなることです。幸い、ユキオは帰り道を冷静に憶えていました。その後の訓練でも、出入りはいつもスムーズにいきました。

 次にメスの「レイコ」を小さい方の放飼場に馴らす練習を始めましたが、じつはまだ放飼場までは出ておらず、寝小屋と通路の出入りにようやく慣れてきたところです。彼女は現在28歳で国内でも最年長のホッキョクグマです。若いクマと違って好奇心よりも警戒心の方が強いようで、餌だけではなかなか思うように動いてくれません。無理をすると負担になるので、安全を自分自身で確認して、徐々に行動範囲を広げて放飼場に出られるようになるまで、彼女に任せるつもりです。レイコの登場は、もう少しお待ちください。

・東京ズーネットBBの動画「ホッキョクグマとアザラシの海[1]ホッキョクグマ」

新施設公開のニュース

写真上:新しい放飼場に出たオスのユキオ
写真下:水中の姿が見られる室内観覧通路

〔上野動物園東園飼育展示係 乙津和歌〕

(2011年11月26日)



ページトップへ