ニュース
サル山80周年!
 └─2011/10/28
 日本各地の動物園でニホンザルなどを飼育展示している施設「サル山」という名称をみなさんも一度は聞いたことがあると思います。その先駆けとなった上野動物園のサル山が2011年10月15日に80周年を迎えました。昭和6年(1931年)〔追記:初期のサル山については記録が少なく、完成時期についていくつかの説がありましたが、再調査の結果、昭和7年[1932年]10月に完成し、同月サルを放したことが判明しました〕に千葉県富津市にある高宕山(たかごやま)の岩山をモデルにして造られました。今でもニホンザルたちが当たり前のようにのんびりとした生活を送っています。しかし、完成直後にはさまざまな問題が起こりました。

 完成当初はニホンザルの群れを展示する予定でしたが、群れでの入手が難しかったため、当時飼育されていたニホンザル1頭、タイワンザル1頭、飼育頭数の多かったカニクイザルとアカゲザルを数十頭ずつと、混ぜこぜでの展示となりました。また、当時サル山は「サルヶ島」と呼ばれ、擬岩の山の周りには脱出防止のための濠がめぐらされ、水に囲まれていました。この二点が災いしたのです。

 導入したサルはどの種も社会的な順位が成立して群れが安定するのですが、4種混ぜこぜにされたこの群れは「烏合の衆」でした。おまけにニホンザルとタイワンザルは、カニクイザル、アカゲザルに比べ一回り以上体格がよいため、2頭のニホンザル、タイワンザルが圧倒的な優位に立ってしまったようです。この2頭とケンカになると、カニクイザル、アカゲザルには勝ち目がなく、追いつめられたカニクイザルは濠に飛び込んで溺れてしまい、身軽なアカゲザルは濠を飛び越え園外に出てしまうということが多発しました。翌年、この混ぜこぜ展示は終了し、ニホンザルの幼獣17頭を群れとして導入することで展示は安定しました。

 サル山ではその後、戦後60年の間に三度の大改修がおこなわれました。その際に濠は埋められ、塀の高さをかさ上げし、プールが増築されるなどの変化はありましたが、高宕山をモデルとした擬岩の山は昭和6年(1931年)から姿を変えずに、現在も上野動物園でニホンザルたちの住処としてその歴史を刻んでいます。日本で一番歴史の長い動物園の、現存する最古の展示施設をぜひごらんください。

追記:初期のサル山については記録が少なく、完成時期についていくつかの説がありましたが、再調査の結果、昭和7年(1932年)10月に完成し、同月サルを放したことが判明しました。

写真:サル山の昔と今、山の姿は変わっていない

〔上野動物園東園飼育展示係 青木孝平〕

(2011年10月28日) 



ページトップへ