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木曽馬「初桜」の馴致と群れ入り
 └─2010/09/24

 2010年3月20日生まれの木曽馬「初桜」は生後6か月になり、現在馴致(訓練)をおこなっています。

 何事にも動じず人にも友好的な、動物園むきのフレンドホースに育てなければと考え、生まれる前から馴致計画を項目に分けて練っていました。 項目は「体への接触」「足の上げ下げ」「手綱での安全な牽引」「ハミの装着」「鞍の装着」などです。

 また馴致をする私たち人間にも、いくつかの約束があります。それは「馴致はしつこくやらず、毎日毎日繰り返す」「1度にいっぱい求めない」「できなくても怒るのではなく、もう1度同じことをやり直す」「決して大声を出さない」「怒るのは短く、ほめるのは長く」などです。気をつけていても感情的になってしまいがちなので、必ずこれらの約束を意識して馴致するよう心がけています。

 初桜は、のみ込みが早く、ほとんど抵抗もしないので、1日の馴致目標を、あっさり達成してしまいます。おとなしく素直で、人にかまってもらうのが好きな性格なので、馴致を嫌がらず、遊びと思っているのかもしれません。運動場で馴致中の初桜を見かけたら、そっと見守ってください。

 さて、馬は生後4~6か月で離乳します。初桜も9月中には母親「幸泉」の乳が吸えないように、しばらく母親から離します。ただし、そのときに1頭では寂しいでしょうから、一番年齢の近い与那国馬「シン」と一緒にする予定ですが、万が一シンとの相性が悪かったときのことを考え、先日木曽馬親子、トカラ馬、野間馬、与那国馬の5頭を一緒にしてみました。

 一緒にしたとたん、トカラ馬の琥太郎が一目散に初桜のもとへ向かい、驚いて逃げる初桜を隅に追い詰めてしまいました。そのとき、初桜は見たこともないような表情を作り、必死に琥太郎にアピールしたのです。その表情は、子馬が乳を吸うときの顔に似たもので、「スナッピング」と呼ばれています。「自分は乳を吸うような仔馬だから攻撃しないで」という信号なのです。しかし琥太郎は、早くに母親から離され、人の手によって育てられたため、馬同士のルールを知らず、飽きるまで初桜の首元を噛んでいました。

 肝心のシンとの相性ですが、母親の幸泉が邪魔をしたため2頭の接触はありませんでしたが、後日柵越しにお互いの首筋をグルーミングする姿が見られたので相性はよさそうです。

 9月21日から1週間の準備期間を経て、9月27日に離乳をおこない、完了したら再び5頭を一緒にする予定です。ぜひ楽しみにしていてください。

写真上:馴致で「足上げ」をマスター
写真中:初桜の「スナッピング」
写真下:琥太郎に追いかけられる初桜

〔上野動物園子ども動物園係 橋川真弓〕

(2010年09月24日)



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