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キンイロアデガエルの死んだふり
 └─2010/04/30

 動物の世界では、天敵に襲われたときに「死んだふり」(擬死)をしてやり過ごす行動が見られます。擬死を引き起こす条件や、擬死中の姿勢、擬死の持続時間は動物によってさまざまです。先日、キンイロアデガエルの擬死を観察しました。

 このカエルはマダガスカル島に生息する非常に美しい小型のカエルです。オスの腹部に外部生殖器のようなものがあると言われているので、私は雌雄判別のために、このカエルの後ろ肢を捕まえ、裏返しにして観察していました。

 すると、急に四肢を痙攣させ始めたのです!

 驚いて私はカエルをケージ内に放しましたが、カエルは四肢を伸ばしきったまま痙攣しています。やがて痙攣はやみましたが、カエルは四肢を伸ばしたまま、今度はピクリとも動かなくなってしまいました。

 放心してカエルを眺めていたところ、しばらくするとカエルは起き上がり、ぴょんぴょんとケージ内を跳ね回った後、隠れられる場所に飛び込んで行きました。

 キツネにつままれたとは言いますが、今回の体験はカエルにつままれたとでも言うべきでしょうか。

 調べたところ、カエル類の多くは「拘束刺激」を与えられた状態、たとえば、強制的に仰向けにさせられた状態が続くと、それが引き金となって擬死をおこなうそうです。知らぬ間に私は、キンイロアデガエルに拘束刺激を与えていたのですね。

〔上野動物園は虫類館飼育展示係 大渕希郷〕

(2010年04月30日)



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