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エゾシカ「トン」のアンバランスな角
 └─2009/09/11

 シカの角はどのように成長するかごぞんじでしょうか? 春先に起こる落角(らっかく:角が落ちること)の後、内部に血管が通った柔らかい角が成長を始めます。この比較的柔らかい時期の角を「袋角」(ふくろづの)と呼びます。夏の終わりごろ、袋角は成長が止まり、硬くなります。

 今年(2009年)、エゾシカのオス「トン」(15歳)は3月17日に右角が落ち、3月20日に左角が落ちました。その後、袋角が成長し、8月28日には茶褐色をした袋角の表面が剥がれ始め、骨化した象牙色の角が現れつつあります。

 今年は、左角の成長が右角に比べて例年になく遅く、心配していたのですが、成長が止まった8月下旬、右角に比して約9割の大きさにまで大きくなりました。

 左右の角の大きさに差ができてしまったのは、左角が落角した直後、根元を擦ってケガをしてしまったこと、それに、トンがシカとしては高齢(15歳)であることなどが原因と考えられます。自然界では珍しいことではありませんが、トンにとっては初めてのことです。

 戦国武将の兜(かぶと)にシカの角が立てられているのを時代劇などで見かけます。その角がふぞろいだったらサマにならないとは思いますが、トンの頭にアンバランスな角が現われるのは珍しいことです。この機会にトンの角をじっくり観察してください。

・エゾシカ「トン」の角が落ちる決定的瞬間をとらえた動画はこちら

〔上野動物園東園飼育展示係 清水一彦〕

(2009年09月11日)



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