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爬虫類の日光浴
 └─2009/08/21

 先日、こちらのニュースで、上野動物園のガラパゴスゾウガメ「タロウ」と「カメ吉」を屋外放飼場に出したとお知らせしました。日光浴をしてもらうのも目的の一つです。

 みなさんの目に触れることはありませんが、じつは両生爬虫類館(ビバリウム)の屋上でも、気温の高い季節、リクガメ等の爬虫類が日光浴をしています。

 爬虫類にとって日光浴は2つの重要な意味があります。ひとつは、自分の体温を上昇させることです。爬虫類は哺乳類や鳥類とちがい、みずから熱をつくり出すことができない動物です。ですから、昼行性の爬虫類は、朝になると日光があたる場所でしばらくじっとしたまま、体が活動に適した温度になるまで待つのです。そして、体が十分あたたまってから活動を開始します。

 日光浴するもうひとつの理由は、骨を作るのに紫外線を必要とするからです。骨はカルシウムから作られますが、カルシウムを吸収するには「ビタミンD3」という栄養素が必要です。ビタミンD3は動物性の餌に含まれているので、肉食や雑食の爬虫類の場合、餌からある程度吸収することができます。

 ところが、草食性の爬虫類は餌からD3をとることができないので、紫外線を浴び、体内で合成しています。したがって、完全な草食性の種が多いリクガメ類などでは、健康維持のために紫外線を浴びることが欠かせません。

 ただし、ビタミンD3の合成に必要となる紫外線は、ガラスを通すとほとんどガラスに吸収されてしまうので、あたたかい時期はなるべく屋上で日光を浴びさせるようにしています。ちなみに、寒くて屋外に出せない季節には、紫外線を照射する特殊なライトも使用しています。

写真は、草食ではなく、肉食寄りの雑食である2種のカメ。左がミシシッピアカミミガメ、右はミナミイシガメ。

〔上野動物園は虫類館飼育展示係 坂田修一〕

(2009年08月21日)



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