朝から雨の日は、キリンたちを部屋から出すだけで一苦労です。とくに大雨の日は大変なのです。キリンは雨がきらいなので、みずから好きこのんで雨の中に出ていこうとはしません。
そんなとき、なんとか部屋から出てもらったとしても、キリンたちはえさの草が置いてある場所まで行くこともなく、放飼場を歩きまわるわけでもなく、木の下で雨宿りをしながら、キリン舎への通路途中にある扉の前にあつまり、「早く部屋に入れろ~」「この扉を開けろ~」と言わんばかりの表情で待っているのです。
しかし、今年(2008年)5月6日生まれのユズ(メス、現在生後4か月)はちょっとちがいます。
今年の夏は、とても暑い日が何日もつづいたかと思うと、突然、滝のような雷雨や豪雨に見舞われることがありました。水びたしになったサバンナの放飼場は川のようになってしまいます。そんなとき、キリンやほかの動物たちも早めに部屋に入れてやります。
キリン舎への通路途中の扉を開けてやると、キリンはみんな急いで室内に入っていくのですが、ユズだけはちがいます。キリン舎手前のパドック(フェンスで囲われたエリア)に入ってから、大雨の中、ユズは道草をしながらのんびり戻ってくるのです。
ユズの母親ユキ(8歳)は雨をきらってユズのそばを離れ、さっさと部屋に入ってしまいます。ユズのまわりにはだれもいません。でも、ユズはそんなことを気にするふうでもなく、雨の中、ポツンと1頭で立っています。
風邪をひかないかな?──見ている私たちは心配なのですが、ユズはおかまいなし。ユズは雨が好きなのでしょうか? 理由はだれにもわかりません。もしかすると、雨に打たれながら何かを想い、たたずんでいるのかもしれません。
(※写真は晴れの日に撮った写真です。)
〔多摩動物公園北園飼育展示係 横田利明〕
(2008年09月05日)
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