ニュース
ユズを譲って……? キリンの赤ちゃん
 └─2008/08/15

 下記ニュースでお伝えしたキリンの赤ちゃん「ユズ」は、2008年5月6日の誕生以降、順調に育ち、日に日に活発になってきました。

・ニュース「アミメキリンの赤ちゃん誕生

・ニュース「キリン赤ちゃん『ユズ』の“その前”“その後”

 小放飼場では手狭になってきたので、7月8日、ふだん群れがいる大放飼場に出すことにしました。ただし、他の個体はしまってあります。いつも柵越しに見ている場所とはいえ、ユズにとっては未知の領域。午前中は開けた扉まで行くのが精一杯でした。

 午後、ユズはようやく大放飼場に足を踏み入れました。大放飼場の寝室への入口も開放しておきましたが、寝室に入るまでには3日ほどかかりました。群れといっしょにくらすためには、今のうちに、どこに何があるのか、しっかり覚えてもらわなくてはなりません。

 とはいえ、一度足を踏み入れればしめたもの。好奇心を抑えきれないかのようにあちこち移動し、2週間もしないうちに大放飼場を全速力で走ったり、見ていて少しヒヤっとする一幕も。

 話は少し戻りますが、前回の記事(上記2番めのリンク)の3日後、2008年6月16日の午前中、動物病院の職員がようすを見に来たとき、少し驚いて親から離れたユズが、一声「モー」と鳴きました! じつは生で聞くのは初めてで、一瞬耳を疑いましたが、下あごを横に動かしながら、たしかに鳴いたのです。近くに牛がいるのかと思ってしまいました……。7月1日も鳴いたので、今後も聞く機会があるかも?!とひそかに期待しています。

 話を戻しましょう。目の高さが私たちと同じだったユズも、7月中旬になると、見上げるほどに成長しました。約30センチ高くって、身長は2メートル近く。体もがっちりしてきたので、群れ入りをさせる時期にきたと判断しました。

 とはいっても、いきなり群れに入れるわけではありません。休園日を使いながら、徐々にならしていきます。7月16日、初めて母親のユキといっしょに親子で大放飼場へ出し、25日には完全に群れ入りとなりました。同じく大放飼場にいるシマウマやオリックスの干渉は受けず、経過は順調そのものだったのですが……ここで想定外の展開に!

 2007年6月13日にいしかわ動物園から来園した「アミ」(メス)とユズの相性がよく、まるで親子のように行動をともにすることがよく観察されるようになったのです。とはいえ、2歳半のアミはまだ子どもです。一方、オスの「カンスケ」(2006年10月22日生まれ、1歳9か月)や、叔母にあたる「ユーカリ」(2006年9月14日生まれ、1歳11か月)とは離れていることが多く、ユーカリにいたっては、ユズが近づくと走って逃げる始末……。

 すっかり母親気分(?)のアミは、大放飼場でユズが座って休んでいるそばで、じっと立って見守ってくれています。ユズもすっかり気を許しているようです。この関係がいつまで続くのかわかりませんが、いちばん安心しているのは、われわれ係員かも知れません(笑)。

 アミは年齢のわりに体格がいいので、来園者の中には本当の親子だと思っている方が多いように思います。本物は、ユズのお腹が空いたときにわかりますよ!

1994年に録画録音したキリンの鳴き声(ビデオ)

写真上:ユズ(左)が母親ユキ(右)の尾をなめたりしてじゃれている
写真中:そこへ、アミ(中)が「母親は私よ!」といわんばかりに割って入る
写真下:母親ユキは立ち去り、そのままアミに甘えるユズ

〔多摩動物公園北園飼育展示係 清水勲〕

(2008年08月15日)



ページトップへ