最近、多摩動物公園のサバンナがちょっとさわがしい、という印象をもたれた方はいらっしゃいませんか? シマウマがほかのシマウマを追い回したり、ちょっかいを出したりするすがたが見られます。じつは、小放飼場でひとりさびしく暮らしていたグレビーシマウマの「ノバータ」(オス、17歳)を、大放飼場に終日出しているのです。
これまで大放飼場では、メスの発情期にノバータを同居させる際、キリンやシロオリックス、ダチョウを先に室内にしまっていました。というのも、ノバータが夢中になってメスを追い回すと、ほかの動物がおどろき、思わぬケガをするおそれがあるからです。
多摩動物公園ではオス1頭、メス4頭のシマウマを飼育していますが、残念なことに、1999年以降、子どもが生まれていません。そこでこのたび、唯一のオスであるノバータにがんばってもらうことにしました。つまり、飼育係がメスの発情を見わけるよりも、ノバータにまかせてしまった方が確実と考えたのです。
シマウマの寿命は、およそ20~25年ですが、ノバータもすでに17歳。年寄りとはいえませんが、かなりの高齢にはちがいありません。
シマウマ全頭を同居させた初日(2007年11月11日)、ノバータの気持ちだけが先走ったようで、メスを追い回すだけで息があがってしまい、あきらめてしまうすがたや、メスに追いついても顔面や胸を後肢でさんざん蹴られるすがたを目にすると、見ているこちらの胸が痛くなってきました。これまで一年のほとんどを小放飼場で過ごしていたため、思い切り走り回ることもできず、体力も落ちてしまったようです。
しかし、ノバータ自身にとってのメリットもあります。それは、メスを追い回すことによって運動不足が解消できること、そして、大放飼場にしきつめられている火山礫によって蹄(ひづめ)が自然に削れ、削蹄(さくてい)の必要がなくなることです。
しかし、いちばんの目標はシマウマの赤ちゃん誕生です。そのためには、ノバータ自身がメスに逃げられても蹴られても、年齢に負けず、がんばってほしいものです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 横田利明〕
(2007年12月21日)
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