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ヨーロッパオオカミの大家族
 └─2007/08/10

 2001年にモスクワ動物園から来園したヨーロッパオオカミのロボ(当時1歳)とモロ(当時3歳)。2頭しかいなかったあの頃を思うと、騒々しい現在の大きな群れは信じられない光景です。

 2頭だけの頃はたがいに距離を置くようによそよそしく、ほとんど一日中寝て過ごすつまらない展示でした。「オオカミ特有のコミュニケーションをお客さんに見せたい! そして自分でも見てみたい!」群れ生活をするオオカミ本来の行動を引き出すには、頭数を増やすことがいちばんです。

 人工保育で育ったオスのロボは行動が幼く、繁殖に成功するまでには3年以上の月日が必要でした。なんとか交尾までこぎつけて、2005年に5頭、2006年に2頭、そして、今年(2007年)は5月13日に4頭の仔オオカミが誕生しました。2005年生まれの5頭のうち、3頭は他園に移したのですが、これで多摩のパック(群れ)は合計10頭になりました。

 母親でメスのアルファオオカミ(第1位の個体)であるモロは、ずば抜けて頭がよく、優秀な母親であり、子どもをすべてりっぱに育て上げています。3回目の出産ともなると、授乳も面倒らしく、1か月半頃には、乳にまとわりつく子どもたちから逃げ回るすがたがよく観察されました。生後3か月になる現在、子どもたちは完全に乳離れし、大人たちに負けずに肉に喰らいついています。

 この展示のいちばんの売りは、やっぱりオオカミどうしのやりとりです。霊長類を除いた動物の中で、いちばんコミュニケーションが発達しているといわれる彼らの言葉は、鳴き声、表情、尾の振り方、耳、姿勢など、体全体を使って表現しています。

 ワンワンキャンキャンと騒がしいやり取りが一日中見られる動きのある展示、これこそみなさんに見てもらいたかった、ほんとうのオオカミのすがたです。

〔多摩動物公園飼育展示課南園飼育展示係 熊谷岳〕

(2007年8月10日)



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