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チンパンジーの感情表現
 └─ 2024/08/23
 以前の記事で、チンパンジーは感情表現が豊かで喜怒哀楽、すべての表情を見せてくれるというお話をしました。今回は、前回の「喜」以外の表現やそのほかにも見られるいろいろな感情を紹介します。

 まずは「怒り」や「恐れ」です。チンパンジーが怒るときは、取ろうとしていたえさを取られたとき、使用したいアリ塚の場所を取られたとき、おとなが若いチンパンジーからティージング(Teasing:物を投げたりちょっかいを出したりする行動)をされたときなどです。その際は、毛を逆立て体を大きく見せて怒ります。

 また、恐れを感じるのは緊張が高まるときなどです。いろいろな状況がありますが、相手のチンパンジーを怖いと思いながら挨拶をする際、緊張が高まると歯をむき出しにして恐れを表します。ときどき、笑顔と勘違いされることがありますが、実際は怖いと思っているのです。

恐れの表情
笑顔

 次に「悲しい」や「不安」です。挨拶をしたのに応えてくれなかったとき、聞き慣れない音を聞いたり見慣れないものを見たりしたときなどに見られます。

 恐れのときにも似た表情が見られることがありますが、悲しいときや不安なときは「イー」と歯を見せ、ひきつったような表情になります。動物の鳴き声を表現するとき、だいたいは“鳴く”といいますが、多摩動物公園のチンパンジー担当者では悲しい表情をしていた場合に“泣く”と表現をしています。

 これは、感情表現が豊かなチンパンジーならではでないかと思います。行動では、「悲しい……悔しい……」と腕をクロスさせて頭や肩の周りをこするような行動をすることもあります。

 とくに子どもは親と離れているところで不安になったときに、口を尖らせ、フーフーと声を出して不安をおとなたちに伝えます。親はこの声を聞くと、すぐに駆けつけ子どもを抱きます。すると子どもは落ち着くことが多いのです。


子どもの不安な表情

 最後に「安心」や「リラックス」です。ゆっくり落ち着いて休んでいるときなどに見られます。

 顔の力が抜け、下唇が垂れ下がった表情になっています。また、好きな食べものを見つけたときや食べているときには「フードグラント」といわれる、やや高めで短い声を出します。


フードグラントを発しながらえさを食べているようす

 このようにチンパンジーは感情を表情や声、ジェスチャーでたくさん表現する動物です。多摩動物公園は群れ飼育をしているため、チンパンジーどうしのやり取りが豊富です。そのため、個性豊かでさまざまな種類の表現を見ることができます。今度、チンパンジーを見るときは、いま、なにを表現しているのか観察してみるのもおもしろいかもしれません。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 河本〕

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