7月14日は
「世界チンパンジーの日」です。
私は、4月からチンパンジー担当になりました。観察を続けるうちにその賢さだけでなく、血縁関係や順位によるコミュニケーションの違い、社会のルール、個体間の駆け引きなど、知れば知るほど興味深い動物だと気づきました。
そうしたチンパンジーについて世界中の人に関心をもってもらい、かれらの保護や保全について考えるきっかけがつくられることを願って2018年に制定されたのが、「世界チンパンジーの日」です。
多摩動物公園では、2018年から毎年イベントをおこなっています。今年は新企画として、チンパンジーのオリジナルグッズとして、手ぬぐいが販売されました。(6月末より)くわえて7月11日より多摩動物公園のチンパンジーが夏バテ対策で飲んでいる梅酢から発想を得た梅酢ドリンク(「世界チンパンジーの日」オリジナルカップ仕様)、梅冷やしうどんを販売予定です。
さて、こちらの手ぬぐい、チンパンジーの他に何が描かれているでしょうか?
新発売のオリジナル手ぬぐい
野菜に気づいた方は正解です! 多摩動物公園のチンパンジーが実際に食べているものがデザインされています。
チンパンジーと言えば、果物を食べるイメージがあるかもしれませんが、多摩のチンパンジーたちには果物をほとんど与えていません。これは野生での食事に近づけるための工夫です。野生チンパンジーは基本的には植物食で、糖分が少なく繊維質が多いものを食べています。そのため、多摩動物公園では野菜中心の餌にしています。
さらに、この手ぬぐいには多摩のチンパンジーの日常も描かれています。
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手ぬぐいに描かれた人工アリ塚を使うイラスト | 人工アリ塚を使うようす |
これは人工アリ塚です。野生ではチンパンジーがアリ塚に枝を差し込み、そこにかみついたアリを引き出して食べる行動が観察されています。この行動にヒントを得て、チンパンジーの「道具を作り使う行動」を引き出すために人工アリ塚が作られました。中には薄めたジュースが入っており、チンパンジーは効率よくジュースを飲むために、枝の先を噛み潰して筆状にした枝に浸み込ませて飲みます。
現在、アフリカに暮らす野生のチンパンジーたちは無作為な農地拡大や採掘事業による生息地減少などで数を減らし、絶滅危惧種に指定されています。
世界チンパンジーの日を通してチンパンジーのことを知りたいと少しでも思っていただければ、それはチンパンジーの未来にもつながると思います。是非、この機会に多摩動物公園のチンパンジーたちをご覧になってみてください。
〔多摩動物公園 北園飼育展示係 南中〕
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