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揺れ動くオスどうしの関係──チンパンジーの社会
 └─ 2024/06/07
 チンパンジーは、「アルファオス」というリーダー的役割をもつオスを中心に群れですごす動物です。オスのチンパンジーは生まれた群れで一生をすごすといわれているので、オスどうしの関係はチンパンジーの社会を生き抜くために重要な意味をもちます。オスたちは、群れのなかでの激しい順位争いに身を投じます。相手に強く噛みつくなど激しい攻撃行動がみられるため、野生ではこの争いにより死亡することもあるといわれています。

 多摩動物公園でくらすチンパンジーの群れにおいて、現在7頭のオスがいるなかで、アルファオスを担っている「ボンボン」(18歳)を中心に、周囲のオスとの関係について紹介します。


群れのアルファオス「ボンボン」

 ボンボンが10代になったばかりのころは、前アルファオス以外のほとんどのオスが幼かったため、争いは起きにくい状況にありました。そのころのボンボンは、挨拶やグルーミングなどのほかのオスとのコミュニケーションをよくとっていました。チンパンジーの社会において、コミュニケーションは群れのなかでうまく立ち回るために必要不可欠です。しかし、ボンボンを含めオスたちが成長するにつれて、関係は変化していきました。

 ボンボンがアルファオスとなり、しばらくしてから徐々にほかのオスとのコミュニケーションが減少し、毛を逆立て威嚇するなど攻撃的な態度をとる場面が増えていきました。たとえば、「ジン」(15歳)というオスとは現在メスを巡って折り合いが悪くなることが少なくありません。特に発情しているメスがいると、ボンボンはジンに対して攻撃的な態度をとり、メスへ近づけないようにします。


チンパンジー「ジン」

 一方、ジンはボンボンとコミュニケーションを積極的にとろうとするなど、敵対心がないように見えます。ジンとしては、ボンボンとの折り合いをよくすることで群れのなかでうまく立ち回り、ボンボンからの敵意を抑えようとしているのかもしれません。実際のところ、ジンとボンボンが挨拶を交わしたりグルーミングをおこなったりする場面もみられますが、ボンボンがジンを避けてしまい、うまくコミュニケーションがとれないことも多々見受けられます。


手前の2頭がボンボンとジン。いっしょにすごしているようす

 ボンボンがアルファオスになる前は良好な関係を築いていたオスたちですが、順位の変化や心身の成長などにより関係が大きく揺れ動いています。オスの関係は群れ全体へ強く影響するため、今後もオスたちの行動や態度に注視しながら群れづくりを進めていきます。

〔多摩動物公園北園飼育展示係 佐藤〕

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