今日7月7日は七夕です。1年に1度だけ織姫と彦星が天の川で会える日とされています。
そんな七夕にちなんで今回は多摩動物公園でくらしているムフロンのオスとメスの話をします。

扉越しのムフロン(左:オス、右:メス)
多摩動物公園ではヒツジの祖先といわれるムフロンを飼育しています。オスとメスを別々の運動場で飼育していますが、おもな理由は繁殖を管理するためです。野生のムフロンは繁殖期である 10月から11月を除いて、オスの群れと、子どもを含むメスの群れに分かれて行動しています。秋になり繁殖期が近づくとメスを巡ってオスたちは自慢の大きな角で頭突きし合って力比べを始めます。その結果、一番強いオスがメスの群れと合流し、繁殖行動をおこないます。
多摩動物公園のムフロンのオスは去勢をおこなっていないので、オスとメスをいっしょにしてしまうといつの間にか繁殖し、産まれた子の父親が誰なのかわからなくなってしまいます。そのため、繁殖させるときはオスとメスを1頭ずつ同じ部屋に入れてお見合いをおこないます。現在は、飼育頭数が多いため繁殖させる予定はありませんが、秋が近づくとオスはメスを気にするそぶりが増えメスの運動場との間を隔てる扉に頻繁に行くようになり、時には扉に向かって激しく頭突きするようになります。またメスも同じく扉の方に近づくようになり、オスとメスが扉を隔てて向き合っている光景が見られます。
それに比べて、ヤギのなかまであるヒマラヤタールはどうでしょう? ヒマラヤタールのメスも群れを形成しますが、オスは基本的に単独でくらします。そのためムフロンと違い、動物園のような狭い環境でオスだけの群れをつくるとケンカが起こってしまいます。多摩動物公園では繁殖のための種オス2頭を隔離してそれぞれ単独で飼育し、ほかのオスは去勢して、メスと同じ放飼場で飼育しています。その結果、ムフロンとは違ってオスとメスがいっしょにいるところを見ることができます。

同じ運動場で生活するヒマラヤタールの去勢オスとメス(上:去勢オス、下:メス)
1年に1度七夕の日に天の川で会うことができる織姫と彦星ですが、多摩動物公園のムフロンのオスとメスは1度も会うことがない年もあります。次にムフロンたちが出会う時、それは新たな命を誕生させる準備の時です。その時までぜひ温かい目で見守ってくださいね。

昨年誕生したメスの「ハナ」(左)。右は母親の「ミミ」
〔多摩動物公園南園飼育展示第1係 増田〕
(2023年07月07日)