多摩動物公園に
アメリカの動物園から3頭のチーターが来園して、4ヵ月が経ちました。
空港でチーターの入った輸送箱を確認するようす
動物園に新しく動物を受け入れる際には、病気を持っていないかを調べるために検疫をおこないます。検疫とは動物の病気の侵入、蔓延を防ぐための制度や作業のことです。新しく動物園にきた動物は一定の期間隔離した上で、血液やフンからサンプルを採取し、病気をもっていないか調べます。検疫中は人を介してほかの動物に病気などを移さないよう、担当職員は専用の白衣を着たり、長靴を履き替えたりします。
今回、3頭のうち2頭の「ケビン」(オス)、「ダミアン」(オス)の検査は問題なく終わったのですが、残り1頭の「バステト」(メス)からトキソプラズマの抗体が確認されました。抗体が確認されたということは、以前に罹ったことがあるか、現在感染しているかということです。
トキソプラズマは寄生虫の一種で、人に感染することもある人獣畜共通感染症のひとつです。そのため、バステトだけ検疫期間を延ばし、トキソプラズマを駆虫する薬を、チーターのえさとなる馬肉やヒヨコの中に入れて投薬しました。投薬終了後に再検査をおこない、トキソプラズマが確認されなかったのでバステトも無事に検疫を終えることができました。
検疫終了後、それぞれ放飼場に出す練習を始めました。ケビンとダミアンは放飼場に出すと落ち着いたようすで探索してすごしていました。しかし、収容の時間になって室内への扉を開けたものの、動く気配を見せず、10分、20分……と時間が経過していきました。2頭ともガラスの前で外に目を向けたまま、扉を見るようすもありません。そこでガラスに板を張り、外が見えないようにしたところ、やっと室内に入ってきてくれました。
左:ダミアン、右:ケビン
バステトは大放飼場に放飼し、こちらも落ち着いたようすですごしていたのですが、人に対しての警戒心が強く、収容の際に扉近くに人がいると近づいてこないため、扉から見えない位置に立ち、気配を消すなど工夫をしないと入ってくれないため苦労しました。
座ってこちらを見つめるバステト
現在は3頭とも動物舎に慣れ、扉を開けるとすぐに室内に入るようになりました。しかし、バステトはいまだに人が近づくだけで大きな音をたてて威嚇をしますし、ケビンとダミアンは肉をそれぞれ1頭分にして分けて与えても、引っ張り合いの喧嘩をします。
個性のあるチーターたちですが、多摩動物公園での今後のくらしにぜひ注目してください。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 前田〕
(2023年06月30日)