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オススメ! 昆虫園でバイオミミクリーのネタ探し
 └─ 2022/10/21
 持続可能な開発目標(SDGs)はニュースや企業目標などでも取り上げられ、広く知られるようになってきました。それとともに、「バイオミミクリー」という言葉を耳にする機会も増えてきたように感じるのですが、みなさんの周りではいかがでしょうか。

 バイオミミクリーとは、日本語で「生物模倣」と訳されることが多く、生物が進化の過程で得てきた機能や形態を模倣し、新素材をつくり出したり、より環境負荷の少ない技術を開発したりすることをさす言葉です。

 昆虫は100万種以上いると言われ、多種多様な形態と生態をしていることからバイオミミクリーのネタを探すのに最適といっていいでしょう。昔からある、生物模倣でつくられた身近な例では、化学繊維のナイロンが挙げられます。カイコのつくり出す絹糸の構造を模倣して、工業的につくられています。

カイコが糸を吐いて繭をつくっているようす
ナイロン製の捕虫網

 また、ナノテクノロジーの発展にともない、モルフォチョウの鱗粉構造やヤマトタマムシの翅をナノレベルで模倣することで、染料を用いず美しい発色をした繊維や金属をつくり出すことにも成功しています。構造色により美しく色あせないだけでなく、塗料を使わないことでリサイクルしやすいなどのメリットがあります。

昆虫園本館2階のモルフォチョウ標本
ヤマトタマムシ

 近年では上記のような素材開発ではなく、社会性昆虫の動きをまねるといった生態系システムのアルゴリズムを模倣する研究も進んでいます。たとえば、アリは誰かに命令されなくても、自律して1匹もしくは数匹でえさを巣に運び入れたり巣の手入れをしたりします。このように自律して動くことのできる自律分散制御型のロボット開発もおこなわれているそうです。

 多摩動物公園では社会性昆虫の代表格であるアリのなかま、ハキリアリを飼育していますが、それぞれのアリが分業しながら自律して動いているようすが観察できます。隊列をなして葉を菌園に運び入れますが、渋滞せずうまく避けながら動くようすは見ていて飽きません。

 また、ハキリアリの菌園はスポンジ状に穴があいており、通気と湿度がバランスよく保たれているようにみえます。渋滞しない動き方や菌園の構造など、ハキリアリを観察することでバイオミミクリーのヒントが見つかるかもしれません。

ハキリアリが働くようす
ハキリアリの菌園

 持続可能な世界を維持するために欠かせない視点として注目されている「バイオミミクリー」。動物園の生き物観察から、アッと驚くような技術革新が起こる日も近いかもしれません。

〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 佐々木〕

(2022年10月21日)



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