2022年5月11日から、ライオン園で展示している群れのオスを入れ替えました。
いままで展示していた個体は加齢により脚が弱くなり、群れ展示の負担が大きくなったため、引退してもらうことにしました。新たに群れに加わったのは3歳のオスです。いままでのオスと比較すると、体重で40kg以上重いとても立派な体格です。
4月下旬から、いっしょに展示される群れのメスとのお見合いを進めてきました。非展示の小放飼場を使い、発情のタイミングに合わせて少しずつ同居できる個体を増やしてきました。新たなオスはとてもやさしい性格なのでメスを傷つける可能性は低かったのですが、まだ若いせいか、メスの勢いに押されてしまうような場面もありました。オスが委縮しないよう、個体の性格を見極め、トラブルが起きないように細心の注意を払って同居を進めました。
小放飼場でお見合い中
ある程度の頭数が展示できる見込みが立ったため、休園日の5月11日に大放飼場で同居させ、翌12日からライオンバス運行中の展示が始まりました。当初はメスに遠慮してしまい、行動域が限られてしまうものの大きなトラブルもなく、無事、オスの入替えをおこなうことができました。
その後、頭数を増やしたり、新オスとトラブルになりがちなメスの放飼を取りやめたりしましたが、6月中旬の時点で、群れの状態は非常に安定してきました。また、オスの行動域もライオン園内全域まで広がり、もうメスに臆することなくのんびりすごせるようになりました。最初は少しバスをこわがるようすも見られましたが、今では道路で寝そべって走行の邪魔になるほど慣れました。一部のメスにはオスを頼るような行動が見られ、日進月歩の成長を感じます。
大放飼場でのようす
今回、オスを入れ替えて興味深い変化がありました。この新しいオスは、非常に人懐こく、オスライオンとは思えないくらい攻撃性が低かったのですが、メスとの同居後、人間に対する興味・依存が激減しました。それも、メスと同居を始めた初日を境に、突然の変化でした。また、人を見るときの目つきも鋭くなり、なんとなく「おとなになった」ような印象です。飼育担当者としては、非常にうれしく思う反面、フンフン鼻を鳴らして、柵越しに甘えてくるような個体だったので、一抹の寂しさも感じます。
まだまだ若いオスには荷の重い役割かもしれませんが、現時点では、十二分にその責を担っています。大きな「伸びしろ」が感じられる、立派なオスであり、今後の成長が楽しみです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 高橋〕
(2022年06月24日)